空中楼閣*R25

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空中楼閣

例えば、妄想

「変に・・なりそう」声が震えている。 私の人生は誰かの悦びとなれば良いのだが、誰かの悲しみや苦悩でしかなかったのならと不意に思った。 切なげな表情と引き攣りそうなくらいに伸びきった足先が愛らしい。 生きるということは自分の中に死を育むというこ…

して・・欲しい

まるで新しい玩具をみつけた子猫みたいに、貴女は嬉しそうな表情で唇を舐めた。 小さく尖った舌の先が妙にエロチックで、キスをして互いの舌先を感じ合うときの感触を、私は思い出していた。「嬉しそうだね」 「だって・・嬉しいから」 私の付け根を左手で握…

欲望の糸

「ドライカレー、レタス、チキンで何が浮かぶ?」 顔を合わせてからずっと甘く潤んでいた貴女の眼差しが、きょとんとした可愛い表情になった。「え、何がって・・」 私は意地悪をするように、黙って微笑んでおく。「それ、美味しそうってこととか?」 「それ…

温室の花

広がった水田の真ん中にポツンの高台になった場所があって、そこには崩れかけた廃屋と骨だけになった温室があった。 まだ温室にガラスが無事だった時には、田んぼに水が張られる時期には、まるで海原の孤島のようで、そこが二人にとっての秘密の楽園だった。…

シルクの雨

柔らかな陽射しとともに、部屋のグリーンも伸びをして細かな葉を揺らして春を受けとめる。 ゴールドの真鍮ポンプがガラス瓶に空けて見えるスプレーを片手に、アジアンタムの寄せ植えに霧吹きをする。葉脈に結ばれた水玉が生き物のように膨らんでいく。「こっ…

ファースト・ブレイク

オフィスの鍵を開けると冷蔵庫の中のように冷えきっている。暖房のスイッチを入れてから、コートとマフラーのままでパソコンを立ち上げる。 例えば、貴女からの朝のメールには音楽サイトのリンクが張ってあって、通勤する貴女の耳元と私のオフィスで同じ曲が…

感覚の深さ

肌の汗が冷えて火照りを冷ましてくれる頃、止めどない痙攣のあとにようやく静かな呼吸を取り戻した貴女が呟いた。「ねえ・・私ずっと、ここに居たよね」 長い睫毛の虚ろな視線が天井を見つめている。「どういう意味?」 私は片肘をついて身を起こした。貴女…

指結び

二人の指の間で小さな音がする。「あ・・ん、そこ・・どこ」 私ではない誰かに問いかけるように、貴女が呟く。私は返事の代わりに、貴女の中指の爪を押さえつける。呼吸が止まる。濃密に絡み合った二人の指に緊張を加えながら、貴女が張り詰める。「はうぅ・…

妄想な日々

膝立ちになって両腕を背中に回すだけで、貴女はいつものように顔を少し上げ、目を閉じる。 僅かな静寂が貴女を愛撫したかのように、赤い唇が微かに開くと、もう肌の温度が熟してしまう。「膝を開いて」 その言葉だけで、滴り始めるはず。音も無く、床を滑っ…

非対称な感覚

肩口から右胸、その膨らみから脇の下へと指でなぞると赤い唇が緩んで、貴女が背を反らす。「右が感じるね。左よりも」 微睡みから引き戻されたみたいに、目蓋を開いた貴女が視線を私に結ぼうと瞳を揺らした。「そうなの。判らない」 「そうだよ。全部、右が…

して、欲しいこと

ベッドボードに頭を委ねて、貴女を見つめていた。 弛緩した私の太腿のあいだで俯せになって頬杖を突いている貴女の、シャワーに濡れた髪先が腰のあたりをくすぐる。 貴女は、貴女の中で果ててだらしなくなった部分を指先で弄りながら、唇を閉じたまま先端に…

熱に憑かれて

あれはウイルス性の脳症だったのかもしれない。 高熱が出ると、自分が奈落の底に横たわっているように天井が遥か遠くに見えた。部屋のふすま絵が自分に向かって飛び出して来る。 幼い私は恐怖に泣きわめいた記憶がある。後になって母は「お前が、脳に異常を…

白磁の滑りと真紅のルージュ

魅惑的な唇と濡れた視線だった。眩しいくらいに白い肌だった。 窓からの薄光に泡立った肌がエロチックに息づいて、微かな吐息が柔らかな唇を震わせながら、大きく小さく波打った。 貴女が読みたいと言った宇宙物理学の本が、緑色のハードカバーの角で貴女の…

クリームチーズと林檎色

久しぶりの雨の日。生暖かいような、肌寒いような、曖昧な湿り気を帯びた空気の中にいる。「レア・チーズケーキが好きだよ。アップル・パイも好きだけどね」 紅茶を口元に運びながら、何気なく貴女に呟いた自分の言葉を思い出した。「愛しては、いないのよね…

性愛事情

シャドーの色を見せながら、目蓋を閉じる横顔が白いシーツに埋もれていた。「今までの彼達は、どんなふうに貴女を揺らしたの」 「え・・そんなこと」 気持ちのいい微睡みの途中で揺り起こされたかのように、甘く気だるそうに貴女が呟く。「答え難いよねえ。…

貴女のカタチ

「そんな事を言われたら、どうしたら良いのか・・」 貴女の困った顔がとても可愛い。私は、どうしても少しだけ貴女を虐めるのが好きみたいだ。困った男だ。「女性はキャンバスに新しい恋を上塗りするのでしょ。だから、そのキスの仕方は」 「え・・?」 ほら…

失うとは

二人で鍋をつつきながら、軽い気持ちでふと疑問を投げかけてみたら、貴女が言葉を失った。「え・・言葉がないというか、今更というか。まさか嘘でしょ、という感じ」 先週あたりに、なんとなくそうではないか、と思い始めて、貴女の言葉でやっと確信できた。…

貴女の場合

目の前に映る私だけを見ていてくれればいいのに、愛おしくなると私の背中を眺めたくなるのですよね。 声になり、文字になっている部分だけを、信じてくれればいいのに、声色や行間を感じたくなるのですよね。 人は心を寄せてしまうと、その人の背中に背負っ…

曲線が好き

枯れないで待っていてくれた。留守の間、水も貰えずにいたプランターの花が、無事だった。 人間の身勝手で連休ともなれば、命の潤いも絶たれてしまう。だから、朝になって健気なグリーンを見た時に、これまた身勝手ながら安堵した。「私だって、枯れちゃうわ…

後ろ手縛りの幸福

女性には、それぞれ触れてはいけないスイッチがあることを知ったのは、大人になって暫くしてからだった。 甘い感覚と緊張で少し汗ばんだまま繋いでいた手の、人差し指を貴女の指の間に滑り込ませた時だった。 驚いたように貴女が私の手を振りほどいた。「あ…

羞恥と悦楽と

耳元から聞こえる貴女の声が上擦っている「胸が痛い・・乳首が・・ああ」 「仕事中に電話した罰ですよ」 貴女は自分のデスクから声を潜めて、電話をかけてきた。オフィスには今は誰もいないから、と。「だって声が聞きたかっただけなのに、あなたが、こんな…

梓的に

「あぁ・・」 送り届ける電車の中で、隣りの座った貴女が小さな声を上げてから私の腕につかまり微かに震えた。「どうかした?」 私の肩に顔を埋めそうになりながら、貴女は頭を小さく左右に振ってから姿勢を立て直した。と同時に、握りしめた私の二の腕に爪…

予期せぬ甘さに

あれ・・こんなに、だったけ。油断すると意識が腰からの快感に埋もれそうだった。「どうしたの?」 揺らしていた腰を止めて、貴女が怪訝そうな顔をする。「いや、大丈夫・・気持ちイイなあって」 「大丈夫って、変なの」 私は貴女の腰を両手で包んで、前後の…

書斎にて

カウチに寝そべって、うたた寝をしていた。深くなった眠りが、急に引き戻される。瞬時、視線を取り戻して、また眠りに迷い込む。 水の中に沈んだり、浮かんだりの心地よさみたいだ。 視界が焦点を結んだ一瞬、ふと疑問符が湧き上がる。沈みゆく意識を引き止…

シャングリラ

大学の図書館の三階はアーカイブとなっていて、よほど古い医学論文の原著でも探すのでもなければ、滅多に訪れることもない。 なにしろ、内容だけを読みたければ、今はネットのオンライン検索システムで手に入る。この図書館では検索ブースが一階にずらりと並…

濡れながら

百日紅が雨に叩かれて赤い影を作り始めた。濡れたアスファルトに広がる赤い花びらを乱して、バイクが走り過ぎる。 雨粒で装飾された窓ガラス越しに路面を眺めながら、私はベッドの上で立ち膝をしていた。 その窓の向うの風景が、時々、霞んでしまうのは、腰…

視姦される肌

貴女が欲しいのは、甘く温かなキスなんかじゃなくて、本当はこんな箱ではないのですか。キラキラと光を浴びて煌めくような透明な箱に、閉じ込めれたいのではないですか。裸に剥かれたままで。 ショーツを脱いだら、紅いパンプスを穿きなさい。お似合いの紅い…

狂おしさは苦しさゆえか

貴女の腕が信じられないような力で私の背中を抱き寄せる。深く曲げた膝で足首を交叉して、私の腰を締め付ける。「ああ、これが欲しかったの。お願いだから」 私は、目を閉じて貴女の耳を噛む。これ・・これって貴女は何を切望していたのだろう。「もっと、来…

白いテラスで

前で結んだリボンを解くだけで、簡単に裸の腰が現れた。貴女の飾り毛は濃くて長い。「楊貴妃も長かったのよ。中国では美人の特徴らしいわよ」 5階建ての最上階、視界を半分ほど隠すような木々があるとはいえ、見上げれば部屋のテラスに置かれた白い丸テーブ…

爛れた時間は

腰を動かすたびに、濡れた皮膚が捲れ上がり、ねっとりと粘膜が絡み付く。鈍く痺れるような快感が、お互いを行き来して、少しずつ臨界への螺旋を昇る。 極みが近づくにつれて貴女の部分は私を締め付けて、押し戻し、手繰り寄せ、私の体液を受け止めようと、食…