空中楼閣*R25

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書斎にて

 カウチに寝そべって、うたた寝をしていた。深くなった眠りが、急に引き戻される。瞬時、視線を取り戻して、また眠りに迷い込む。

 水の中に沈んだり、浮かんだりの心地よさみたいだ。

 視界が焦点を結んだ一瞬、ふと疑問符が湧き上がる。沈みゆく意識を引き止めて目蓋を開いた。

・・あれ、あんな本あったかな。

 500ページほどのその単行本は、見上げた書棚の中には入り切らずに、並べた本の上に横たわっていた。

 私はあまり単行本を買わない。まして、分厚いのは苦手だ。

 カウチから立ち上がって、書棚に手を伸ばした。「シャングリラの予言」という、これも分厚い単行本の上にくたびれたブックカバーで覆われていた。

 支えている「シャングリラの予言」は、エスクァイア日本版に連載された「クラブ・シャングリラ」を編集したもので、私にとって、いわば遊びのバイブルだった。

 見覚えの無い本が、突然、書棚に現れたような錯覚に陥りながら、本を開いた。

・・ああ、これか。忘れていた。

 最後の一章を未読のまま閉じていた本だった。「エレガントな宇宙」、世界は十三次元の振動する紐で出来ている、という当時は最先端の宇宙論だった。

 遥か宇宙を探るのも悦楽ならば、卑近な遊び場に耽るのも悦楽。どちらも私のシャングリラ。そして・・

「お昼寝、気持ち良さそうだったわよ」

 カウチの脇で床に横座りしていた貴女が、団扇を置いた。私は、ブックカバーを外してゴミ箱へと投げ入れてから、カウチに腰を下ろすと最後の一章を開いた。

「おいで・・」

 貴女の裸の腕を引いて私の膝の間に導いた。宇宙の四つの力を統一する文章へと足を踏み入れる。時間と空間は必要な次元なのか、と綴られている。

 貴女が私のファスナーを下ろすして、ズボンを開いた。この「時空間」が私のシャングリラ。