書斎にて
カウチに寝そべって、うたた寝をしていた。深くなった眠りが、急に引き戻される。瞬時、視線を取り戻して、また眠りに迷い込む。
水の中に沈んだり、浮かんだりの心地よさみたいだ。
視界が焦点を結んだ一瞬、ふと疑問符が湧き上がる。沈みゆく意識を引き止めて目蓋を開いた。
・・あれ、あんな本あったかな。
500ページほどのその単行本は、見上げた書棚の中には入り切らずに、並べた本の上に横たわっていた。
私はあまり単行本を買わない。まして、分厚いのは苦手だ。
カウチから立ち上がって、書棚に手を伸ばした。「シャングリラの予言」という、これも分厚い単行本の上にくたびれたブックカバーで覆われていた。
支えている「シャングリラの予言」は、エスクァイア日本版に連載された「クラブ・シャングリラ」を編集したもので、私にとって、いわば遊びのバイブルだった。
見覚えの無い本が、突然、書棚に現れたような錯覚に陥りながら、本を開いた。
・・ああ、これか。忘れていた。
最後の一章を未読のまま閉じていた本だった。「エレガントな宇宙」、世界は十三次元の振動する紐で出来ている、という当時は最先端の宇宙論だった。
遥か宇宙を探るのも悦楽ならば、卑近な遊び場に耽るのも悦楽。どちらも私のシャングリラ。そして・・
「お昼寝、気持ち良さそうだったわよ」
カウチの脇で床に横座りしていた貴女が、団扇を置いた。私は、ブックカバーを外してゴミ箱へと投げ入れてから、カウチに腰を下ろすと最後の一章を開いた。
「おいで・・」
貴女の裸の腕を引いて私の膝の間に導いた。宇宙の四つの力を統一する文章へと足を踏み入れる。時間と空間は必要な次元なのか、と綴られている。
貴女が私のファスナーを下ろすして、ズボンを開いた。この「時空間」が私のシャングリラ。