空中楼閣*R25

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2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

梓的に

「あぁ・・」 送り届ける電車の中で、隣りの座った貴女が小さな声を上げてから私の腕につかまり微かに震えた。「どうかした?」 私の肩に顔を埋めそうになりながら、貴女は頭を小さく左右に振ってから姿勢を立て直した。と同時に、握りしめた私の二の腕に爪…

日記など

五年前の八月の終わりに、こんな事を書いていた。 「砂時計、風見鶏」 いつの間にか風の湿度が変わった 人の営みなどお構いなしに 過ぎていく時間 目に見えないからこそ油断できない その気配を感じ取るには 心の余裕が必要 鳥の声が変わる 稲の緑色が変化す…

予期せぬ甘さに

あれ・・こんなに、だったけ。油断すると意識が腰からの快感に埋もれそうだった。「どうしたの?」 揺らしていた腰を止めて、貴女が怪訝そうな顔をする。「いや、大丈夫・・気持ちイイなあって」 「大丈夫って、変なの」 私は貴女の腰を両手で包んで、前後の…

生命の秘密は宇宙の秘密

とても久しぶりだったと思う。いつもの道をいつもよりもずっと遅い時間に車を走らせていた。 数年に何度か、そんな気分に陥ってしまう。自分という存在が感じうる全ての世界と繋がっている感覚。 丁度、手袋の指の一つになったような感じなのだ。自分は、根…

天空の金華豚

水に囲まれた広大な緑が眼下に広がり、その遥か向うには高層ビル群が外輪山のようにそびえ立つ。 かつて結界を張ったといわれる都は、64年前のこの日、今日のような晴れ渡った夏の日に、敗戦を迎えたという。 正午を少し回った時間にシャンパンを掲げ、金…

生まれながらに

10年以上も棲んでいた金魚の一匹が、水底に痩せた身体を横たえて、動かなくなっていた。 生命とは「動的な平衡」だと誰かが言っていたが、それは私に言わせれば、水を満たした器みたいなものだと思う。器は常に世間とか、自分の心情とかで揺らされていて、…

見えないもの

目まぐるしく変わる天気に、予報が当たっているのか、外れているのかすら判らなくなっている。 人は理解不能なものを怖れる。予測できない、想像できない、という感覚に過剰に反応する。過剰に楽しいことを連想するか、過剰に不安の連鎖に陥るか、する。 そ…

混沌として曖昧に滲むもの

彼に言わせると「あご髭の男」は全部、あの俳優に見えるらしい。「長い髪の細面であの年齢の女」は、全部、あのアイドルに見えるとか。 まったく彼の顔の識別の能力ときたら、彼が覚えているカクテルの名前より少ないに決まってる。彼が銘柄で思い出せる日本…