空中楼閣*R25

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2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

書斎にて

カウチに寝そべって、うたた寝をしていた。深くなった眠りが、急に引き戻される。瞬時、視線を取り戻して、また眠りに迷い込む。 水の中に沈んだり、浮かんだりの心地よさみたいだ。 視界が焦点を結んだ一瞬、ふと疑問符が湧き上がる。沈みゆく意識を引き止…

シャングリラ

大学の図書館の三階はアーカイブとなっていて、よほど古い医学論文の原著でも探すのでもなければ、滅多に訪れることもない。 なにしろ、内容だけを読みたければ、今はネットのオンライン検索システムで手に入る。この図書館では検索ブースが一階にずらりと並…

来し方を思えば

貴女という水の器に、いろいろな石が投げ込まれて、静かだった水面を乱しては、底へと石が沈む。 幾重にも沈んだ石の重みで、器は揺れなくなるけれど、水は浅く、溢れやすくなる。 人は、時々、溜め込んだ石を吐き出さないといけない。自分に丁度いい、重さ…

なるほど、だが、しかし

「未来を予測する唯一の方法は・・未来を創るパワーを持つことである」 まあ、そうでしょうけど「今は、明日をも知れません」という時もある。 そんな時は、もう少し内向きな言葉がいいな、と思うのだが。

聞きながら

貴女から貰った「雨音」という名のコーヒーが、まだ冷凍庫の中にある。心がざらついて、どうしようもなくなると、私は「雨音」を淹れる。 柔らかな香りの優しい甘さが口に広がる。 この世界では五秒間に1人が人生の幕を引く。その内の僅かだけれども、唐突…

濡れながら

百日紅が雨に叩かれて赤い影を作り始めた。濡れたアスファルトに広がる赤い花びらを乱して、バイクが走り過ぎる。 雨粒で装飾された窓ガラス越しに路面を眺めながら、私はベッドの上で立ち膝をしていた。 その窓の向うの風景が、時々、霞んでしまうのは、腰…

某日、午後1時半

硬い音とともに、彼は床に小さなグラスを置いた。「過冷却になってるんだ。静かに冷やされて、自分が凍ったことに気付いていない」 彼の手には、白い冷気を垂らすような凍ったボトルがあった。「こうやって、注ぐと、気が付くんだ。自分が凍っているべきだっ…

某日、午前11時

冷凍庫に寝かせてあったガラス瓶を取り出す。たちまち、手の中で透明な瓶が凍っていく。 アンティークな鉛色の小さなグラスに、過冷却のズブロッカを注いだ。 夏の正午前、きついスピリッツを飲みたくなった。注がれた酒は、氷点下でも凍ることなく蜜のよう…

弛緩する身体

奥まで含むたびに、鎖が床を叩く。巻き付けた紅い皮の首輪の重さを感じさせられる。 自分で自分を犯すように、喉の奥までディルドを呑み込む。嗚咽を数回堪えると、意識が遠ざかる。 力が抜けて腰が落ちる。床に突いた膝が左右に滑って、腰が開く。ベルトで…

視姦される肌

貴女が欲しいのは、甘く温かなキスなんかじゃなくて、本当はこんな箱ではないのですか。キラキラと光を浴びて煌めくような透明な箱に、閉じ込めれたいのではないですか。裸に剥かれたままで。 ショーツを脱いだら、紅いパンプスを穿きなさい。お似合いの紅い…

狂おしさは苦しさゆえか

貴女の腕が信じられないような力で私の背中を抱き寄せる。深く曲げた膝で足首を交叉して、私の腰を締め付ける。「ああ、これが欲しかったの。お願いだから」 私は、目を閉じて貴女の耳を噛む。これ・・これって貴女は何を切望していたのだろう。「もっと、来…

愚問を自らに

小さな「予期せぬ終わりが」いろいろとあったから、自分の環境は変わりつつあるのかもしれない、と少し前に書いた。 言葉とは恐ろしい。文字となるともっと力を持つ。更なる終わりが、後に続いた。 また1人、恩師が世を去った。それも突然に。 これで私に道…