2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧
薄らぐ意識の先で縦長の窓の向こうを見ていた。光を透かす木々の枝で、細かな緑が季節の風に揺れていた。 想像もしていないことは、意図もせず突然に、しかもさりげなく訪れるものだと、初めて知った。 スカートをたくし上げて、しゃがみ込んだ腰を上下させ…
彼はベッドに腰をかけて二本目のビールを飲み干すと、コツンと乾いた音をさせて空になった小振りな瓶を床に置いた。 そのまま手を離さずにビール瓶を私の前まで滑らせてから、私の顔をじっと見つめながら身体を起こして座り直した。 床の上に足を崩して座っ…
最初は連続ラジオドラマだったという。大ヒットで三部作六時間もの映画となり、やがてテレビのドラマとして、放送系列を変えて四度もリバイバルされた。 無論、実際には聴いた事も見た事もない。 ラジオは1952年からの放送で、映画がその翌年から始まっ…
以前、創作した文章の中に「名前も知らない鳥が鳴いている」などとと書いた記憶がある。 実際、鳴き声から判る鳥といえば、鶏、カラス、スズメ、雲雀、鶯、それから百舌ぐらいかもしれない。それどころか姿を見かけても、名前を知らない鳥にほうが多い。 ホ…
つま先が張り詰めて踵が浮くと、立てた膝がゆっくりと伸びていく。内側に秘められて見えなかった戦慄きが、次第に大きくなって姿を現した。 夕陽に映し出された貴女の乳房に黄金色の産毛を見てから、随分と時間が経っていた。 密閉された部屋の中は、二人の…
今年はいつになく燈台(どうだん)ツツジの真紅と公孫樹の黄金色が際立っている。楓や山モミジなのは立ち枯れてたように色合いが悪い。 季節の変化から紅葉は取り残されてしまったみたいだ。 そういえば、公孫樹の黄葉はもっと遅い季節だったような気がした…
普段はそういう事を絶対に口にしないし、その方面の話題には眉をひそめるどころか、軽蔑の眼差しすら送るような女性が、とても生々しい言葉を事も無げに呟いてしまう。 そんなシーンは、とても猥雑で官能的だ。「後ろからは、いつも痛いのに。なんで気持ちい…
「あなたの事、考えるだけで濡れてくるの」 吐息まじりの呟きが電話の向こうからする。 貴女の柔らかく膨らんだ下唇を思い出す。冬の口紅は、妙に色っぽい。多分、吐く息の白さと紅色の対比かもしれない。 冬になって涸れてしまうのは、川の水ばかりではない…
感じの良いお店ね。・・隠れ家のような入り口だけど、中からの眺めはいいねえ。でも、ちょっと足元が冷たいかも。・・暖房、強くしてもらおうか。私、いつも足先が冷たくて、顔は火照っちゃうから。・・掘りごたつだったら良かったかな。このお店には似合わ…
指先が冷たい時は、そこだけ温めてもだめなんだよ。・・そうなの?身体の中心が温まらないと、指先まで温かくならないんだ。・・温めて、私の真ん中から。どうやって、温めようかな。・・あなたの熱が欲しいなあ。私の熱って?・・一番、熱くなってるところ…
淫らな官能に耽る時間は、この扉から始まった。互いが快楽に浸るためだけの時空間だった。 部屋のドアを閉めたら、カーテンを開けて、午後の光で部屋を満たした。浴槽にお湯を張り、空調を少し高めに設定したら、コンシェルジュにシャンパンとベリー、それに…
とめどない快感への準備は、朝から始まっている。 いつもより早い時間にベッドから抜け出すと、裸になりながらシャワーへと向かう。髪を洗い終えてから肌をボディーシャンプーで泡立てた。 滑らかな泡を塗り付けながら、まだ眠っていた乳首を刺激した。片膝…
楽しみに溺れるための準備は、朝から始まっていた。 いつもより早起きをして、朝の支度を済ませ、夫と子供を送り出す。家事を片付けてから、シャワーを浴びた。 タオルで身体を拭ったら、昨夜の下着は洗濯カゴに丸めていれた。明るい部屋を全裸でクローゼッ…