空中楼閣*R25

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2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

妄想家

夏の終わりの雨にカンナの花びらが微かに揺れるのを、目の隅で追いながら、道路の真ん中近くで引き裂かれた猫の骸を避けた。「あなたって、自分以外の誰を失っても哀しまないのでしょ」 と貴女は言う。 確かにそうかもしれない。だけど、すこしだけ間違って…

貴女からの手紙

1月末の貴女からの手紙。 こんばんは。「受け月」という言葉を初めて知りました。「上弦の月」は弦が月の主役で「受け月」は皿のような部分が主役なのですね。 寒椿は香りがしましたでしょうか。以前に蜜を吸ったことがありました。雌しべの膨らみの部分に…

日記

数年前の一月には、こんな事を書いていた。 1月31日 風の中ゆうに15メートルはある大きな樹が 幾本も天に伸びて 古の武蔵野はこんなにも 背の高い雑木林だったのかと 畏敬を込めて梢を見上げた 遥か天上には一羽の鴉 君がこの公園の主なのか 変わり行く…

役柄は「良い子」

昨日、雨に打たれて紅い花びらを散らした百日紅が、濡れたアスファルトにそれぞれの紅い影を造っていた。 今日は、青空と強い日差しに夏の残像のように黒い影を写している。 太陽の光に少しだけ反抗してみても、せいぜい雨の日に紅い影を作るだけ。・・私は…

ドール・ハウス(4)

窓ガラス越しに青い空が何処までも澄み渡っていた。透明を幾重にも塗り重ねると青くなるのだろうか、と思いながら見上げている間に男がキャミソールを脱がせ始めた。 されるがまま両腕を上げて全裸になる。濡れたお尻を急に寒く感じて、乳房の先が硬くなった…

ささやかな抵抗

いつもなら素直にイエスとは言わない貴女から、「はい」という短い言葉だけが思いがけずに返ってくると、心に妖しい感情がぽつりと浮き上がり、ゆっくりと沁みて広がっていく。 それは例えば別れ際のキスのときに、何気なく貴女の片方の手首をつかんで後ろ手…

ドール・ハウス(3)

二本の指に男の指が割り込んで来た。押し付けられて拡げられる感覚が、霧のように意識を曖昧にした。「ああぁ・・だめぇ」 ルールのことなど考えていられなかった。 実のところ、最後にはいつも大きな声を上げてしまっていた。声を出すなと言われて堪えてい…

夏の終わりに

<音もなく雨> 声にならない叫びが 濡れたルージュを震わせる白いノドを仰け反らせて 切なく眉根を寄せて 足の指を丸めて音もなく舞い降りる 細かな雨が散りばめられて万華鏡が映し出されるガラス窓淫靡なマッサージ器の騒音と 貴女の甲高い悲鳴が響きわた…

ドール・ハウス(2)

男の手が花びらの右脇に触れて意識を引き戻された。全てが曝け出されていた。皮膚を開かれて冷たい刃が触れた。「ここまでは毛深いのに、途中からは急に短いのだね。お尻の周りにはほんの僅かだ。アヌスの周囲もツルツルにしてあげようね」 自分で見下ろす限…

秘密、もしくはホクロ

貴女の一番、気持ちがいい場所は、二人で見つけた秘密のホクロが目印だった。それは、貴女の花びらの雌しべを被う粘膜にあって、快感に膨らんだ時の頂きを少し左に下ったところにある。 以前、何処かでそう綴ったら、突然、女性からコメントを貰った。「どう…

三つの箱

箱が好きだ、というと、京極夏彦の「魍魎の匣」に出て来るような、「ほう」と啼く生首を箱に入れて持ち歩く男かと思われそうだが、あの隙間のない「みっちり」感が好きなのではない。 むしろ、透明でそれなりの空間をもった箱が好きなのだ。箱というよりも、…

カフェにて

「窓の外を眺めながら、後ろから揺らされるのです」「何が見えるのですか?」「街を行く人々が、見て見ぬ振りをして」「彼らはどう思っているのでしょうね」「澄ました顔のくせに、淫らなオンナだと」「そうされたいのですね」「・・はい」 窓ガラスに右の頬…

ドール・ハウス(1)

二時間ほど前にこの家の扉を開け、玄関脇の階段から二階に上がった。この部屋には南向きの出窓があった。その窓からは河川敷の野球練習場を見下ろすことができる。 窓の左側にあるソファーで男が手招きをした。男の前に立つとショーツを脱ぐようにと言われ、…

天空の桃林

今度は空中なのね、と伝えると、硝子の箱はどこにでも作れるよ、と彼から返事があった。 確かにそうかもしれない。彼は、透明な閉鎖空間が好きなのだから、それが地上にあろうと、空高くにあろうと関係ないだろう。 彼の部屋で蒼い光に揺れる水槽も、植物園…

桃の香りと戯れる午後

両手で包み込むようにして、貴女の白い球体を捕まえる。肌触りのいいスカートを捲り上げると貴女の湿度が香り立った。 細長いテーブルの端に両膝を揃えて突いて四つん這いのままで、貴女は火照った頬を冷たい天板に寄せて熱を冷ます。その顔が美しく乱れてい…

桃に耽る日々

左の親指で捲り上げて、ピンク色が白く滲むような付け根まで剥き出しにした。 貴女が隠し持っている水蜜桃は、他の人よりも一回りは大きいけれど、貴女はそんな事はきっと知らないだろう。 夏を待つ陽射しは思いのほか強くて、少し傾き始めたこの時間にでも…

夭夭たる桃

あれは、初めての漢文の授業だったと思う。 真新しい教科書のあるページから目が離せなかった。桃夭(とうよう)という詩経の有名な詩だった。 無論、正しい解釈ができたわけでもない。ただ、その漢字から受けるイメージだけで、私は甘い感覚に陥っていた。…

桃の残り香

私はまだ行く末への支度を始めたつもりはないが、もしかたら、そんな心持ちになっているのかもしれない。不惑過ぎれば、誰もがそう思うのだろう。 それでも水蜜桃を想う。この想いは多分、最期まで始末できないことだろう。この続きは、また次回に。

桃狂い

<タイムリミット> 雨上がりの午前中の日差しに 柔らかな毛と花びらを 私に見えるように 腰を拡げる 見たいから・・もっと 細い指で水蜜桃を割って 恥ずかしいアナル 桜色の花芽 潤んだ腰が揺れはじめ 肩が震えて吐息が漏れる 見つめてるよ ・・溢れでる貴…

送り火に夏が逝く

不惑という歳になると、誰もが惑い始める。歩いて来た道を振り返り、足元を眺め、先へと続く道を思う。すると先が見えてしまう心持ちに陥る。 そこで、見えてしまった未来を、少しだけでも変えられないかと藻掻き始める。が、しかし、大方は火傷する。そして…