空中楼閣*R25

*リンク先が不適切な場合があります。ご容赦を*

役柄は「良い子」


 昨日、雨に打たれて紅い花びらを散らした百日紅が、濡れたアスファルトにそれぞれの紅い影を造っていた。

 今日は、青空と強い日差しに夏の残像のように黒い影を写している。

 太陽の光に少しだけ反抗してみても、せいぜい雨の日に紅い影を作るだけ。・・私はずっと「良い子」を演じてきたから、だから淫らな背徳に憧れるの、と貴女は言うけれど、ずっと貴女も私も「良い子」からは抜け出せないんだよ。

 産まれたばかりの子供だって、楽しいから笑うのではなく、笑うと親や大人が喜ぶから笑ってみせる。親の笑顔を望まない子はいない。それは親のためというよりも、自分がより良く生きる術なのだ。

 親から子へと連鎖して引き継がれる遺伝子と環境は、逃れようも無いものなのだと、「聖なる予言」にも書いてある。

 だから、異なる遺伝子が交わし合う時間だけは、もっと自分に素直でいよう。「良い子」でいいんだ。自分にとっての「良い子」はあるがままの自分であって、演技ではない。

 それを人が背徳と呼ぼうが、淫らを誹謗しようが、自分にとって素直な「良い子」、「我」が「まま」であればいいのだ。せめて二人で過ごす部屋では、そうしていよう。

 そうだよ。貴女は・・良い子だね。もっと濡らしてもいいんだよ。