空中楼閣*R25

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2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

淫らの連鎖

見上げると、銀色のスプーンと生卵を割り入れたカクテルグラスを手にして、逆さまになった彼が私を見下ろしていた。 逆さまなのは私のほうで、顎が胸に付くほど首を曲げて、後頭部を朱色のソファの座面に埋めていた。 素肌の腰は背もたれに委ねて、全裸の私…

卵の連鎖

卵焼きは関東は甘く、関西は塩味、あるいは味醂と出汁を入れた出汁巻き卵らしい。 私は微かな塩味と薄く出汁の利いた卵焼きが好きかもしれない。「かも」しれない、というのは、そういう卵焼きにまだ巡り会っていないからだ。 母が私に作る卵焼きは、関東出…

静かな日々には

この部屋にいると、月に数回、外の気配が消えてしまう朝がある。昔、「飛ぶ教室」という児童文学の本を、誕生日に買ってもらったのだが、この部屋は「飛ぶ部屋」なのかもしれない。 外の気配が消えるといっても、部屋の二面には大きめの窓があり、人々の平穏…

新しいスケッチ

匂い(1) 宵闇のなか 川面を渡る風に吹かれて青草が濡らすサンダルの足先を思う甘噛みをした足指と 貴女の吐息が蘇り湿った髪に手のひらで触れた熱が包んだ腰の硬さを 嗚咽する喉の奥まで深く沈めて含みながら、お漏らしなさい・・草の上私の両手に震えを…

スイッチ

たった三年前の文章なのに、なんだか自分から紡ぎ出されたとは思えないくらいだ。 たった三年なのに、私は変わってしまったのだろうか。もっと以前には、もっと綺羅綺羅と冷たかったのに、三年前には妙に艶っぽく色めいていて切なく、優しい。 今は、どうな…

五月の風景画

序文・・犀星に想う 蕩ける貴女の緋色から 零れ堕ちる涙は糸を曳いて二人をヌラヌラを縛りつけていく私は肌に溺れ、意地汚くも未練を綴り 貴女は性を垂らして、素知らぬ顔で糧とする駆け引きは虚しいばかりの言葉遊びヌメヌメとした粘膜の交わりは 阿片のよ…

樹液に溶ける肌

指の先が弾力の塊を揺らすたびに、白く霞んだ視界が閉ざされる。腰から背中へと駆け上がる快感に瞼が閉じてしまうのだ。 腰が溶けて崩れ落ちそうになると、背中に痛みが走り、引き戻される。遠くで彼の冷静な声がする。雨は音もなく私の肌を濡らす。「もっと…

新緑に染みて

差しかけた傘の中で、貴女が服を脱いでいく。傘を持たないほうの腕で貴女の衣服を抱え込む。 霧のような雨が降り注ぎ、肌を包んで温もりを奪う。産毛立つ乳房は見る間に勃起して、幾重もの花色の波紋の中で先端を硬く尖らせる。 黒々とした飾り毛が下腹部で…

こんな事、してる場合か

「ねえ、私の中でオシッコしてみてよ」 貴女はそう言う。そうだな、試してみようか、と思う。もう、いろいろと終わったのだから。 射精する事と排尿する事は、開口部は同じでも、息を吸う事と酒を飲む事ぐらいに、体の仕組みという理屈で区別されている。で…

こんな夜に

・・お前に乗れないなんて、 如何にもという感じのNHKのアナウンサーが、多分、清志郎が真っ先に報道される事を「馬鹿野郎」と思っていただろう、いつものニュースの時間、それも最後に滑り込むように、教科書通りの抑揚で原稿を読んだ。 でも、原稿が走…