淫らの連鎖
見上げると、銀色のスプーンと生卵を割り入れたカクテルグラスを手にして、逆さまになった彼が私を見下ろしていた。
逆さまなのは私のほうで、顎が胸に付くほど首を曲げて、後頭部を朱色のソファの座面に埋めていた。
素肌の腰は背もたれに委ねて、全裸の私は恥ずかしい姿で天井に向かって膝を開いていた。
「もっと開いて・・卵、あげるから」
彼の言葉に、剃毛されて剥き出しの自分の起伏に視線を移す。
柔らかそうに盛り上がった起伏には、縦に刻まれた亀裂の端で片方の花びらの一部が溢れていて、緋色の粘膜は雌しべの包皮へと続いていた。
彼は、ここで生卵を受け止めさせるつもりなのか。
「中に入れて上げるから、卵黄だけ」
そうか、彼は私に黄身だけを食べさせるつもりなんだ。だから、スプーンを持っていたんだ。
彼の手が視界に入って、イヤラシイ亀裂の真上で停まった。グラスにスプーンを刺し入れてから、手元を傾け始める。
自分の膨らみに隠れて、よく見えないが、見ようと身体を動かせば、狙いが外れて自分の顔に卵を落とされそうだった。
そんなわけで、私は少し緊張しながら、ついには目を閉じた。
「ちゃんと見てなさい」
すぐに彼に叱られる。彼の片手が私に触れる。
「あ・・」
触れられただけで、甘くなってしまう。
器用に片手の指で起伏の裂け目を左右に開かれた。片方だけ溢れていた花びらが開いて、もう片方のピンク色が見えてきた。雌しべのフードが引き延ばされて、小さな突起の真っ赤な頂点が顔を出す。
「うっ・・う」
冷たさに声が漏れた。彼はスプーンで黄身を押さえながら、トロリと白身だけを私に落としていく。
彼の目には、私の花びらの内側を透明な白身が盛り上がるように包む光景が見えるのだろうか。
何度も鏡映しの自分の中身を、彼に見せられていた。
左右のヒダを開くと、細かな横縞のピンク色のレリーフの洞窟があって、その入り口の上には小さな丘と、その頂上にある尿道の窪み、そこから上はのっぺりとしたまま、敏感な花芽へと繋がっている。それが私の女の部分。
快感に貪欲な洞窟が、今、透明なゼリーで被われている。そう思うと、アヌスが息づいてしまう。アヌスが呼吸すると、洞窟も息を始める。あ・・吸い込んじゃう。
「お尻まで垂れてきた」
彼は、タイミング良く私を弄る。興奮する場面でも、私の身体の微かな反応を冷静に察知する。
「ああ・・いやっ」
言葉に粘膜が反応してしまう。
「ほら、お口が開いてきた。触れてもいないのに・・イヤラシいんだね」
だめだめ、そんなはずはない、と思うのに、身体だけが言葉を追って反応してしまう。粘膜の入り口から、卑猥な音まで響きはじめた。ああ、もうダメだ。
自分でも恥ずかしいと思うけれど、停められない。呼吸する部分は、被われた粘液を震わせて小さな音を立て続ける。
「白く濁った泡まで出て来た。そろそろ食べさせてあげるね」
彼がカクテルグラスから黄身をスプーンで掬いだす。ゆっくりと焦らすように私の花びらのとスプーンを運んだ。
「あう・・あああ」
硬質な冷たさが私をこじ開けた。
「ほら、呑み込んだ・・」
自分の花びらの狭間にスプーンの柄が垂直に突き刺さっている。
「良く掻き回してあげからね」
「ああん、スプーンでなくて、あなたの・・が、いい」
彼は嬉しそうに手を止めて、じゃあ、零さないようにね、と私の花びらを手のひらで塞いだ。
「掻き回して、奥で出してあげるから、後でカクテルグラスに産卵しなさいね」
ああ、なんて卑猥な事を・・私、グラスに、おしっこまで漏らしてしまいそう。