空中楼閣*R25

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2008-01-01から1年間の記事一覧

玉結ぶ場所 〜冬の物語〜

冷えきった空気の中、ようやく空へと昇った太陽の光をゆっくりと集める朝露の煌めきだった。小さく結ばれた滴が、生み出される真珠みたいに大きく膨らんだ。 それが始まりだった。そして、誰もが美しいのだろうかと思った始まりでもあった。 では、誰でも良…

冬の物語(1)

テレビの中で普段は軽そうにふざけている独身の芸人が、「あの頃、彼女とは真剣に結婚しようと思っていた。ただ、今は待ってくれと・・」と言ってた。 男が真剣に考えて、時期を選んでいる間にも、女は待てないことがある。そのことに男は腹を立てる。真剣に…

白く吐く息 〜冬の物語〜

ほんの短い時間だけ、空気が川面で姿を見せる。朝の陽に温められて川面から立ち上ろうとする刹那、水面で冷やされて露点温度を割って水滴となった。 斜めに射し込む光の中で白く、静かに煌めき佇む。白い吐息。 未だに想像が及ばないのは、女性が感じる乳房…

冬の物語(序章)

肌と心が裏表の関係ならば・・ 愛という言葉を肌を得るための呪文に使う男がいる。愛という言葉と肌を得ることは同じだと思っている男がいる。愛という言葉は肌を得るためのチケットのようなものだと思っている男がいる。愛という言葉を恐れるあまり、肌とは…

古(いにしえ)からのギフト

いつだったか、冬至から大晦日までのこの慌ただしい時間について書いたことがあった。 つまり「冬至から聖夜、そして大晦日は、大昔、同じ日だった」という話だ。 ・・永遠を閉じ込める日々・・ デスクの上を黒いヒールが滑っていく。貴女の吐息とともに、パ…

エロスの女神

貴女は、とても柔らかい体をしていた。 ワルツが上手く踊れる相手のように、背中に触れた手にほんの少しだけ力をこめただけで、貴女は私に思うように体を動かした。 膝の内側を私の膝で少し押すだけで、貴女は腰の角度を変えた。「あなたに触れられると体が…

乞う人

「愛して欲しい。愛してるって言われたいの」 という人達は、果たしてどれくらい、心から人を愛したことがあるのだろうか。「何言ってるの。愛が判らないとかって言ってたくせに」 分らないと、今も思っている。だから「愛して欲しい」なんて言えない。「欲…

光の君

いつもより香水が強く感じられた。 匂いは人の心を強く揺さぶる。特に異性の香りは、人によって好みは極端に違うのだが、その分、抗えないほどの力を持っている。 なにしろ、自分の遺伝子と最も似ていない遺伝子を持った異性の匂いに、動物は惹かれてしまう…

キスから始める

いつもより乱暴に後ろからベッドの押し倒し、スカートを捲り上げた。ストッキングとショーツを剥いでから、ペースを落とす。 ゆっくりと手のひらでヒップを撫でてから、目の前に現れた腰の二つの膨らみの狭間へと、骨盤を撫でるように指を滑らせた。「あ・・…

キスから始まる

彼に背を向けるといきなり後ろから抱き締められた。そのままベッドへと押し倒される。 スカートを引っぱり上げられて、腰の熱が解放される。言葉では抵抗するけれど、自分から腰を浮かして心なしか膝を緩めてしまう。 微かな動きを見透かすように、彼の手が…

冬を過ごす場所

この季節になると、昔に描いたこんな場所が恋しくなる。ハードディスクを探しまわって、ようやく見つけだした。 それにしても、あの店は何処で出会ったのだろう。とても居心地が良かったことだけを覚えている。ただ、少しだけ深酒をしていたことも思い出す。…

逢瀬

緋色と黄金色の雪が静かに舞い落ちる。一面に錦を重ねて、風もない青空のもと落葉が水面を埋めていく。 縁側をガラスの引き戸で囲った日溜まりに、貴女の白い裸体が横たわる。降り積もる錦は、その貴女の魅惑的な曲線の向こうへと消えて沈む。 陽射しが反射…

邂逅

風も無く、時間が静止したような青空のもと、絶え間なく色づきが落葉する。 はらはらと紅色や黄色が音も無く降り続ける公園は、まるでその場所だけが、時の流れを目に映しだすスクリーンのようだ。 某哲学者が新聞に記事を寄せていた。彼自身を哲学へと導い…

曇った冬空に

もうすぐ昼の時間だというのに、夜の雨を降らした雲が空に居座っている。届かない陽射しに大地から冷えて来た。 先週の今日、火曜日の未明に彼は逝ったのだ。見守る人達は、誰一人として彼の名を知ることもないままだった。 訃報は昨日、私に届いた。二、三…

2==シャンパン・ボトル

薄らぐ意識の先で縦長の窓の向こうを見ていた。光を透かす木々の枝で、細かな緑が季節の風に揺れていた。 想像もしていないことは、意図もせず突然に、しかもさりげなく訪れるものだと、初めて知った。 スカートをたくし上げて、しゃがみ込んだ腰を上下させ…

1==アジアン・ビール

彼はベッドに腰をかけて二本目のビールを飲み干すと、コツンと乾いた音をさせて空になった小振りな瓶を床に置いた。 そのまま手を離さずにビール瓶を私の前まで滑らせてから、私の顔をじっと見つめながら身体を起こして座り直した。 床の上に足を崩して座っ…

きみの名は

最初は連続ラジオドラマだったという。大ヒットで三部作六時間もの映画となり、やがてテレビのドラマとして、放送系列を変えて四度もリバイバルされた。 無論、実際には聴いた事も見た事もない。 ラジオは1952年からの放送で、映画がその翌年から始まっ…

木の話

以前、創作した文章の中に「名前も知らない鳥が鳴いている」などとと書いた記憶がある。 実際、鳴き声から判る鳥といえば、鶏、カラス、スズメ、雲雀、鶯、それから百舌ぐらいかもしれない。それどころか姿を見かけても、名前を知らない鳥にほうが多い。 ホ…

下弦の月

つま先が張り詰めて踵が浮くと、立てた膝がゆっくりと伸びていく。内側に秘められて見えなかった戦慄きが、次第に大きくなって姿を現した。 夕陽に映し出された貴女の乳房に黄金色の産毛を見てから、随分と時間が経っていた。 密閉された部屋の中は、二人の…

染まる記憶

今年はいつになく燈台(どうだん)ツツジの真紅と公孫樹の黄金色が際立っている。楓や山モミジなのは立ち枯れてたように色合いが悪い。 季節の変化から紅葉は取り残されてしまったみたいだ。 そういえば、公孫樹の黄葉はもっと遅い季節だったような気がした…

重ねた色の内側は

普段はそういう事を絶対に口にしないし、その方面の話題には眉をひそめるどころか、軽蔑の眼差しすら送るような女性が、とても生々しい言葉を事も無げに呟いてしまう。 そんなシーンは、とても猥雑で官能的だ。「後ろからは、いつも痛いのに。なんで気持ちい…

冬の口紅

「あなたの事、考えるだけで濡れてくるの」 吐息まじりの呟きが電話の向こうからする。 貴女の柔らかく膨らんだ下唇を思い出す。冬の口紅は、妙に色っぽい。多分、吐く息の白さと紅色の対比かもしれない。 冬になって涸れてしまうのは、川の水ばかりではない…

戯れはテーブルの下で

感じの良いお店ね。・・隠れ家のような入り口だけど、中からの眺めはいいねえ。でも、ちょっと足元が冷たいかも。・・暖房、強くしてもらおうか。私、いつも足先が冷たくて、顔は火照っちゃうから。・・掘りごたつだったら良かったかな。このお店には似合わ…

戯れはデスクの上で

指先が冷たい時は、そこだけ温めてもだめなんだよ。・・そうなの?身体の中心が温まらないと、指先まで温かくならないんだ。・・温めて、私の真ん中から。どうやって、温めようかな。・・あなたの熱が欲しいなあ。私の熱って?・・一番、熱くなってるところ…

エロチック・デバイス(3)

淫らな官能に耽る時間は、この扉から始まった。互いが快楽に浸るためだけの時空間だった。 部屋のドアを閉めたら、カーテンを開けて、午後の光で部屋を満たした。浴槽にお湯を張り、空調を少し高めに設定したら、コンシェルジュにシャンパンとベリー、それに…

エロチック・デバイス(2)

とめどない快感への準備は、朝から始まっている。 いつもより早い時間にベッドから抜け出すと、裸になりながらシャワーへと向かう。髪を洗い終えてから肌をボディーシャンプーで泡立てた。 滑らかな泡を塗り付けながら、まだ眠っていた乳首を刺激した。片膝…

エロチック・デバイス(1)

楽しみに溺れるための準備は、朝から始まっていた。 いつもより早起きをして、朝の支度を済ませ、夫と子供を送り出す。家事を片付けてから、シャワーを浴びた。 タオルで身体を拭ったら、昨夜の下着は洗濯カゴに丸めていれた。明るい部屋を全裸でクローゼッ…

午前十時

秋空の透明な青色のように冷えこんだ空気が、高くなった陽射しに温められて、ベッドの上での遅い珈琲タイムを包み込んだ。 窓を半分だけ開けて、昨夜の官能を珈琲の香りと入れ替えた。 気だるそうな表情の貴女の髪を撫でてから、床の上で絡まっている柔らな…

午後二時

斜めに射し込む陽射しが、肌の起伏を柔らかく浮かばせる。遥かな地の、どこまでも続く砂丘は、こんなふうに滑らかな曲線を描くのかもしれない。 ここしばらく、流れる時間を楽しむ余裕すら見失っていた。だから今日は、軽くキスをした後で、貴女を見せて欲し…

今は、欲しいだけ

彼女からの相談事に思わず、苦笑いをしてしまう。「彼ったら・・来週、頑張って時間つくります・・だって。忙しいけど、射精のためなら何とでもする、と聞こえて仕方ないわよ。なんか、逢う気が失せる」 もちろん、それまでの彼の言動があってのことだけど。…