空中楼閣*R25

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2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

温室の花

広がった水田の真ん中にポツンの高台になった場所があって、そこには崩れかけた廃屋と骨だけになった温室があった。 まだ温室にガラスが無事だった時には、田んぼに水が張られる時期には、まるで海原の孤島のようで、そこが二人にとっての秘密の楽園だった。…

桜追い

桜を追いかけるようにして迷い込んだ午後は、古い家屋の内装をアレンジした和食の店。古木のようなカウンターにひとり通された。 追いかけてしまったのは桜の花弁のせいだけでなく、最初に見かけた桜が古くからの墓地の奥にあったからだし、迷い込んでしまっ…

春蘭花銘鑑

声にして読んでみて、と彼が言う。「春蘭。直立した花茎はやや肉質で、膜のような鞘状の葉で覆われている。花弁はやや短く・・」 「似てるでしょ。貴女の、と」 耳元で心地よい声、それだけで腰が甘い。「唇・・唇弁は真ん中に溝があり、左右に薄紅色の斑点…

シルクの雨

柔らかな陽射しとともに、部屋のグリーンも伸びをして細かな葉を揺らして春を受けとめる。 ゴールドの真鍮ポンプがガラス瓶に空けて見えるスプレーを片手に、アジアンタムの寄せ植えに霧吹きをする。葉脈に結ばれた水玉が生き物のように膨らんでいく。「こっ…