空中楼閣*R25

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2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

背中の向うに

彼の腕が弦楽器を奏でる弓のように、ゆっくりと動くたびに、私は消えそうになる視線を堪え、解けそうな指先に力を込める。 唇から漏れる恥ずかしい吐息が、不意の大きな喘ぎになってしまって、慌てて唇を噛んだ。 着物を裾を開く指先の感覚が消えて行く。立…

貴女の場合

目の前に映る私だけを見ていてくれればいいのに、愛おしくなると私の背中を眺めたくなるのですよね。 声になり、文字になっている部分だけを、信じてくれればいいのに、声色や行間を感じたくなるのですよね。 人は心を寄せてしまうと、その人の背中に背負っ…

曲線が好き

枯れないで待っていてくれた。留守の間、水も貰えずにいたプランターの花が、無事だった。 人間の身勝手で連休ともなれば、命の潤いも絶たれてしまう。だから、朝になって健気なグリーンを見た時に、これまた身勝手ながら安堵した。「私だって、枯れちゃうわ…

慣性の法則

驚くほどスムースだった。たった四日間乗らなかっただけなのに、ハンドルが滑らか過ぎた。サスペンションが路面の振動を丸く、けれど、遅れもなく伝えて来る。 最初にこの車に乗ったのは、もう10年近く昔。あの時と同じ感動かもしれない。 ほんの少し離れ…

切り花

同性にタフな女性と異性にタフな女性がいるような気がする。 群れないという意味で、同性に対してタフなのではないか。懲りないという意味で、異性に対してタフなのだろう。 自分を取り巻く環境を、男性も含めて利用すると言い切れる人は、同性である女性に…

ガラスの林檎

何となく抱かれることが男を繋ぎ止めておく唯一の手段だと思っていた。確信とかではなく、本当に何となく、恋愛関係とはそんなもので、それが世間一般の常識だと。 例えるなら、キスをされた時には、その唇が離れないうちにキスに応えなくてはいけないという…

後ろ手縛りの幸福

女性には、それぞれ触れてはいけないスイッチがあることを知ったのは、大人になって暫くしてからだった。 甘い感覚と緊張で少し汗ばんだまま繋いでいた手の、人差し指を貴女の指の間に滑り込ませた時だった。 驚いたように貴女が私の手を振りほどいた。「あ…

羞恥と悦楽と

耳元から聞こえる貴女の声が上擦っている「胸が痛い・・乳首が・・ああ」 「仕事中に電話した罰ですよ」 貴女は自分のデスクから声を潜めて、電話をかけてきた。オフィスには今は誰もいないから、と。「だって声が聞きたかっただけなのに、あなたが、こんな…