エロチック・デバイス(3)
淫らな官能に耽る時間は、この扉から始まった。互いが快楽に浸るためだけの時空間だった。
部屋のドアを閉めたら、カーテンを開けて、午後の光で部屋を満たした。浴槽にお湯を張り、空調を少し高めに設定したら、コンシェルジュにシャンパンとベリー、それにスコッチを届けてもらう。
同時に二人が現れた。多分、ラウンジで互いを焦らしながら、澄ました顔でコーヒーでも飲んでいたのだろう。向かい合わせになって、時々、膝を緩めながら。
久しぶりのキスを交わし合ったら、まずは座り心地の良いソファーに身を沈め、オットマンに足を伸ばす。まずは、目の前で繰り広げられる悦楽に浸るだけだ。
スコッチを満たしたグラスの氷の音を聞きながら、官能の吐息と汗を匂いを満喫する。
ベッドの前で立ったまま二人の女性がキスを始めた。鮮やかな赤とローズピンクが柔らかく重なって、境界を溶かすように交じり合う。
小さな舌先が探り合い、次第に吐息を大きくしていった。抱き合ったまま、ベッドに並んで腰を下ろす。
妖しい指達が、互いの腰から下腹部を這い回り、スカートをたくし上げると淫らな玩具を露にした。
「約束通りだね。二人とも」
一瞬、キスを中断して、二人同時に私を見つめて微笑んだ。部屋にモーター音が響き出す。吐息が溢れた。
縺れ合ってベッドへと崩れた二人は、互いの脚の間に顔を近づけて、腕を動かし続ける。すぐに腰を弾ませ、背を反らし、官能の声をあげた。
グラスの中で、また氷が溶ける音がした。シーツが乱れて、女性達の乳房が露になる。肌が解けて、昼下がりの晒された。
気づくと喉が乾いていた。腰が張り詰めていた。汗を掻いたグラスを口に運ぶと、喉が灼けた。
私など居ないかのように、二人は淫らな愛撫を続ける。抜け落ちた玩具が甲高い音を響かせたまま、ベッドの上で身をくねらせる。
自分の硬さが窮屈になっていた。私はソファーから立ち上がり、ベッドへと手を伸ばして、放り出された電動玩具の息の根を止めた。性具は匂い立つほどに白く汚れていた。
その手で魅惑的な腰に触れた。その狭間にキスをしていた方が顔を上げて、私に言った。
「まだ、だめよ・・もう少し我慢して」
彼女とは反対の方から「ふふ・・」と笑い声が聞こえた。
いつしか全裸になった女体が、エロチックなオブジェのように絡まり合っていた。しなやかな腕がウエストの曲線に沿って蠢き、乱れた髪が太腿の間に捲きついている。
交歓の声が上がり、吐息が溢れる。蜜音が跳ね、腰が痙攣を見せる。長いキスが二人の唇を濡らし、唾液と蜜が糸を曳いた。
私の硬さはズボンの中でオアズケを喰った犬のように涎を流している。
「ああ・・来て」
一人が私に腕を差し伸ばした。
「ううん・・欲しくてたまらない」
背を向けたまま、もう一人が呻いた。
私は上着を脱ぎ、ズボンを放り出した。裸になて二人のベッドに膝で登った。
交叉して擦り合わせた花びらを分けるように、私の硬さを割り込ませた。快感を貪ろうと、二人が腰を器用にくねらせて絶頂へと登り始める。
私の手は二人の腰を支えるだけだった。身悶える乳房には届かない。
二人は私の官能など意には介さない。何故なら、私は彼女達のエロチック・デバイスだから。そして私も、二人の名前を知らない。知っているのは、官能に耽ることができる最高のデバイスだと言う事だけだ。
花びらの狭間で体液を吐き出すと、二人は白濁を互いの粘膜に塗り付け合った。指を使い、舌を使い、腰を使って、私の白濁を味わった。
二人が一頻り快感を貪ると、今度は私が悦楽に耽る順番だ。二人の性をデバイスとして。そういえば、前回、一人がこう言っていた。
「そろそろ、もう一つ欲しいわね・・ペニス」