エロチック・デバイス(2)
とめどない快感への準備は、朝から始まっている。
いつもより早い時間にベッドから抜け出すと、裸になりながらシャワーへと向かう。髪を洗い終えてから肌をボディーシャンプーで泡立てた。
滑らかな泡を塗り付けながら、まだ眠っていた乳首を刺激した。片膝を開いて、花びらを指で開き、強めにしたシャワーをあてる。
お漏らしをしながら腰を震わせ、軽く達してから浴室を出た。
タオルで水滴を拭ってからドレッサーの前に座ると、丹念に薔薇の香りのアロアオイルを刷り込んだ。肌が妖しく艶めいて火照り出す。
肩から脇へ、胸元から乳房へ、ウエストラインから下腹部へ、足先から太腿へ、膝を開いて花びらの脇にも刷り込んだ。
濡れた光沢の乳房を撫でて、硬くなった乳首に塗り込める。疼き出す花びらにも、指を使った。
何度も軽い絶頂を味わっておくのが、快感への準備だった。
リモート操作の小さなベニスがついたバタフライを貼付ける。いつもは着けないようなセクシーなランジェリーを選んで、身支度を終えた。
いつもより一本早い通勤電車で揺られながら、満員の乗客の中で何度もスイッチを入れたり、切ったりする。
セブン・トゥエルブ・サーティーの10センチヒールが、ぐらりと揺れるのをアーモンドトゥの中で指を曲げて、なんとか堪えた。
棲ました顔でセキュリティーゲートを抜ける。空港のチェックインゲートで、ショーツの中のオモチャで捕まる女がいたら面白いのに、と下らない妄想をした。
更衣室での着替えは、人目を憚るのが面倒だけど、結局、トレイに行っても、バタフライを付け直すだけで、そのまま午前中の仕事を終えた。
ブルーのバタフライは、蝶々の胴体に天狗の鼻が生えた感じのオモチャで、少し引き上げると蝶々の頭が雌しべも刺激してくれるし、引き下げれば少し内側へ曲がったお尻がアヌスにも届く。
でも、まさかデスクでスイッチを入れるわけにもいかないから、ただ花びらに含ませていた。
その内、もぞもぞと疼いてきたから、コピーのときにコピー機の横でスイッチを入れた。思わず背中が反って、片足がつま先立ちになった。
もう少しな感じでコピーが終わってしまったけど、上司に書類を届けたら以前の書類を持ってこいと言われたので、その足で書類庫へ急ぎ足で向かった。
ドアの内鍵をして、一番奥の窓際のキャビネットにもたれてスイッチを入れる。ブラウスの前を開いてブラを引き下げ、もう硬くなってる乳首に爪を立てた。
「あん・・あああ」
ベストのポケットからボールペンを取り出して、ペンのお尻を蝶々の下へ潜らせて、パンスト越しに雌しべを探しだした。
強く押し付ける。痛いほど強く。
腰がびくんと波打って、バンドで固定されてるバタフライを押し出しそうになる。雌しべが削れるくらいに、押し付けたペンで上下に擦った。
「あ・・逝きそう」
膝が崩れて、ゆっくりと床に腰を下ろした。スカートのまま脚を開いて、小さく震えて昇り詰めた。
呼吸が整わないうちに、彼にメールをした。・・今、逝きました、と。
午前中の仕事を終えて、更衣室へ向かう途中で同僚に呼び止められた。いつものように、彼女からは合コンの誘いだ。品定めだけして煮え切らない割には男を欲しがる女だな、と内心で苦笑いして、「今回は、パス」と告げて手を振った。
午後から有給を取った。トイレで念入りにメイクを直したら、バタフライを含んだまま、官能の時間へと会社を飛び出した。
彼からの携帯が鳴った。タクシーでおいで、という。
あの部屋で待っているのは、私のエロチック・デバイス。迷ってないで、使ってみれば判ること。最高の楽しみに溺れられるデバイスが待っている。
幹線道路まで歩いて、タクシーを拾った。
後部席に滑り込むと、すぐにドライバーがウインカーを出してアクセルを踏んだ。走り出した車の後部シートで、私はバタフライのスイッチを入れた。
彼のところに辿り着くまでに、何回、昇り詰めるのだろう。