空中楼閣*R25

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逢瀬

 緋色と黄金色の雪が静かに舞い落ちる。一面に錦を重ねて、風もない青空のもと落葉が水面を埋めていく。

 縁側をガラスの引き戸で囲った日溜まりに、貴女の白い裸体が横たわる。降り積もる錦は、その貴女の魅惑的な曲線の向こうへと消えて沈む。

 陽射しが反射する板の間に肩と腰で触れ、反らした背中と折り曲げた両足が宙に浮く。

 伸ばした貴女の右手が連符をピアノで弾くように軽やかに動く。同じ鍵盤を叩いているのに、潤んだ唇から溢れる声は音色を変えて行く。

 始めは密やかな吐息で始まり、短く高い音となり、やがて連なった響きとともに嗚咽に変わる。

 左手が波打つ胸を撫で回し、柔らかな乳房に爪を立てる頃には、低い呻きと高い叫びが重なって、浮かした踵が大きく揺れた。

「蜜が跳ねる音・・だね」

 温めた赤ワインにシナモンを落としたグラスを手の中でくゆらせながら、私がそう呟くと、まるで尖った雌しべにキスを受けたように貴女の腰が大きくうねった。

「・・ああ・・いや」

 蜜口を叩く指先が糸を紡いで、小さな泡が連なった。冬の光に煌めいて、紅葉の赤と落葉の黄金を潤ませる。

「何が嫌なの」

 うわ言のように貴女が顔を振る。

「ううん・・いいの。ああ、ねえ、お願い」
「どうしたの?」
「してい・・いィ?」

 蜜を弾く指の動きが激しくなった。茜色の乳首が痛々しいほど勃起している。

「どうしたい?」
「うぅ・・指・・入れたい」

 私は返事の代わりに、ホットワインを一口含む。ゆっくりと喉を鳴らす。

「あああ・・欲しい。ねえ、欲しいから」
「貴女は、素敵な女だね」
「していいの・・指、入れていいの?」
「この時間が、私には宝物だよ」

 切なげな貴女の啼き声を聴きながら、粟立ち震える乳房の向こうに沈む落葉を眺めた。

 私は静かにグラスを掲げる。この時間、今だけ感じることが出来る世界に巡り逢えたことに。