重ねた色の内側は
普段はそういう事を絶対に口にしないし、その方面の話題には眉をひそめるどころか、軽蔑の眼差しすら送るような女性が、とても生々しい言葉を事も無げに呟いてしまう。
そんなシーンは、とても猥雑で官能的だ。
「後ろからは、いつも痛いのに。なんで気持ちいいの」
貴女の『いつも』を想像してしまう。日常の交わりで微かな痛みに顔をしかめる貴女は、どんな喘ぎ声を漏らすのだろう。シーツにすがる指先は、痛いだろうか、快感だろうか、と。
「ああ、私、濡れてる。他の男の人なのに」
快感に酔うような曖昧な視線で、拡げた自分の腰を覗きこんで、そんな呟きを聞かされたなら、『他』ではない男との貴女の交わりを思い描いてしまう。こんなふうに、交わった部分を眺めたりはしないのだろうか、と。
「キスしていい。ここにキスされるの嫌い?・・でもしたいの」
秘めていた欲情を解き放つ瞬間を見せてくれるのは、男性としての心をとてもくすぐられる。遠慮がちに、でも、大胆に自分の『したい』を表現しはじめる。
澄ました顔で日々を送る貴女を思い描きながら、どれほどの欲情を閉じ込めているのだろうかと、心が踊る。
どんな顔をして赤い唇を開き、どんな具合に濡れた舌を巻き付けるのだろうか。
「上に載ってもいい・・はしたないって思わないで」
もう自分でも止められないほど、貴女は肌を解き放ってしまう。微かな羞恥と背徳を振り払うように、腰を動かし揺らしては背中を反らす。声を響かせ、快感に溺れる。
髪を乱して、息を荒げる。
「ああ、見えちゃう。全部、見えちゃう」
端正なその顔で、清楚な佇まいで、濡れた唇から舌を覗かせ、眉根を寄せて身体を火照らせて、淫らな言葉を口にする。そのコントラストが、心を焚き付ける。
壊れるまで耽ればいい。狂ったように粘膜を擦り付ければいい。重ねた色を一枚ずつ剥がすように、貴女全裸になっていく。