空中楼閣*R25

*リンク先が不適切な場合があります。ご容赦を*

白く吐く息 〜冬の物語〜

 ほんの短い時間だけ、空気が川面で姿を見せる。朝の陽に温められて川面から立ち上ろうとする刹那、水面で冷やされて露点温度を割って水滴となった。

 斜めに射し込む光の中で白く、静かに煌めき佇む。白い吐息。

 未だに想像が及ばないのは、女性が感じる乳房の心地よさだ。乳首はともかく乳房は理解を超える気がする。そう思っている男は私だけだろうか。

 指先が凍える夜だった。人の気配もない高層ビルの中庭で、私は貴女のコートの中、セーターをたくし上げて、始めて触れる乳房の柔らかさに心地よくなっていた。

 私のコートの肩に貴女は顔を伏せたまま、肩で息をしていた。

「冷たいよね。指先」

 そう気遣いながら、柔かな熱から指を離せないでいた。貴女は黙ったまま顔を何度か振った。

 掌に中で貴女の乳首が硬くなっていた。私はそれにあからさまに触れるのが躊躇われて、掠めるように触れながら乳房を包んでいた。

 不意に貴女の息が苦しげになり、氷ような闇の中に白い熱の吐息が見えているのに気付いた。

「どうしたの。苦しいの」

 私は的外れな心配に問いかけを繰り返す。貴女はただ黙って髪を振る。

「ごめん。止めようか」

 胸から離そうとした私の手を、貴女が抑え込んだ。

「ううん。止めないで」
「でも、苦しそうだよ」
「いいの。そのまま触ってて」
「ん、うん」

 遠い記憶だった。幼い自分だった。肌が女性を変えてしまう事など、思いもつかなかった。

 貴女は肩で息をしながら、冷たい公園のベンチで膝を摺り合わせていた。