空中楼閣*R25

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三つの箱

 箱が好きだ、というと、京極夏彦の「魍魎の匣」に出て来るような、「ほう」と啼く生首を箱に入れて持ち歩く男かと思われそうだが、あの隙間のない「みっちり」感が好きなのではない。

 むしろ、透明でそれなりの空間をもった箱が好きなのだ。箱というよりも、切り取られた透明な空間。

 一面のガラス窓一つで、カフェでも、高層ホテルでも、そこはまるで外界からは守られた空間のような錯覚に陥る。こちらから外を見渡せるということは、外からも丸見えのはずなのだか、何故かその視線を意識させない。

 カフェのガラス越しに通り過ぎる人を、不躾に目で追うことに何の遠慮の感じないが、店の中で珈琲を楽しむ人を通りすがりにじっと見つめることは憚られる。

 内側か、外側かという感覚の他にも、鑑賞する者とされる者という立ち位置の錯覚もあるのだと思う。

 何故、そうなのかと深く考えたことはないが、私に限らず誰もがそうなのではないだろうか。透明なガラスの内側と外側に大きな差はないのに、何故かガラス箱には守られているという感覚に甘えたくなる。

 シティーホテルのオフィス街を見渡しながら、貴女の淫らな行為を曝け出させる。シースルーに近い観覧車の中で膝を拡げさせて、口と指を使わせる。誰もいない植物園の温室のベンチで、貴女の花びらの内側を晒して、蜜を吸う。

 いずれにしても、透明な壁で囲まれた空間が好きだ。その中に居る事も、外から眺めることも。

 ここに三つの箱を用意した。管理人の箱、私の淫らな妄想の箱、そして貴女が淫らを見せる箱。

 どれも、これも、きっと妖しく濡れるはずだと思う。