空中楼閣*R25

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桃に耽る日々


 左の親指で捲り上げて、ピンク色が白く滲むような付け根まで剥き出しにした。

 貴女が隠し持っている水蜜桃は、他の人よりも一回りは大きいけれど、貴女はそんな事はきっと知らないだろう。

 夏を待つ陽射しは思いのほか強くて、少し傾き始めたこの時間にでも、腹這いになった私の肩がジリジリと紫外線を感じてしまう。

 その陽射しに晒された貴女の大きめの突起から、蜜が揮発していくような淫らな香りが漂っていた。裸にされた雌しべの付け根が乾いてしまわないようにと、舌先から垂らした唾液が糸をひいた。

 貴女の腰が小さく震えて浮き上がり、萎みかけていた突起が緊張を取り戻した。透明な体液で包み込むように右の人差し指で塗り拡げた。

 甲高い貴女の声が部屋に響き渡っても、指の腹で螺旋を描き続けた。

 やがて強弱を帯びた声が途切れ、嗚咽を堪えるように息をつき、啜り泣き、しゃくり上げ始めても、同じペースで同じ強さで人差し指を動かした。

 開け放ったブラインドの縞模様を肌に纏いながら、貴女は爪先まで両脚を伸ばし、身体を仰け反らせて苦悶の表情を浮かべ、マニュキアの爪を折れるくらいにシーツに食い込ませた。

 ひときわ大きな声を上げて裸身を弾ませると、張りつめた腰が一気に弛緩した。

 私は映画のシーンを眺めるように、貴女のエクスタシーを鑑賞した。真っ赤に膨れあがった水蜜桃が、弛緩する声とともに平たくなったように包皮に沈んだ。

 それでも指を止めることなく、声も出せなくなった貴女に螺旋を描いた。

 私に欠けているものは、人への想いだと思った。感情を惜しみなく人に捧げることを、私は躊躇うのだった。

 理由は自分でも判っていた。怖いのだ。我が身を失うのが怖いのだった。

 すくなくとも理性が感情に勝る間は、到底、無理だった。どんなに心惹かれた人にすら、いつもどこかで理性の衣を纏っていた。

 息も絶え絶えに身悶える貴女の姿すら、こうして眺めてまうのだった。

 このまま貴女が失禁しながら意識を失おうとも、そのまま息を引き取ろうとも、私はただ指を動かし、貴女を眺め続けていられる気がした。

 光と影の縞模様の中で、貴女の苦悶が変わっていった。切なげな眉根はそのままだったが、しっかりと閉じられた目蓋が開いて、眼差しが宙を彷徨いだした。

 裂けそうに声を上げていた唇が、微笑むように揺らいでいた。思い出すように全身を震わせながら、花びらの中心から熱を零し、シーツを濡らしていった。

 食い込ませた指先から力が抜けて、求めるように両腕を伸ばして私を招いた。

 「とけちゃう。ああ・・とけちゃうの」

 包皮に沈んだ突起を、もう一度、際立たせるように露出させた。

 この脈打つ果肉を頬張って気の済むまでキスをしたら、壊れながらも受け入れてくれる貴女を愛おしく抱き寄せたら、私は裸になれるだろうか。

 ブラインドを開けて、素直な涙を流すだろうか。