空中楼閣*R25

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某日、午後1時半

 硬い音とともに、彼は床に小さなグラスを置いた。

過冷却になってるんだ。静かに冷やされて、自分が凍ったことに気付いていない」

 彼の手には、白い冷気を垂らすような凍ったボトルがあった。

「こうやって、注ぐと、気が付くんだ。自分が凍っているべきだったことに」

 グラスは、正座した私の拡げた膝の間に置かれていた。彼はかがみ込んで、そのグラスに、「すでに凍っているべき」のスピリッツを注いだ。

 瓶の口から水飴のようにトロリとした液体が、グラスを満たした。グラスの底から、見る間に白く凍り始める。

 中を覗くと、かき氷のように氷片が渦巻いていた。

 表面が凍ったグラスを彼は、私の太腿の付け根へと滑らせながら近づけた。

「・・あ」

 冷気が腿の内側を撫でる。交叉した手首を背中で縛られて、正座したまま彼を口に含み続けていた私の足は、もう感覚を無くしていたかと思っていた。

 そう、膝から上は感じるのだった。

 彼の手が動いて、グラスが更に近づいた。凍ったグラスは、きっと敏感な粘膜に張り付いてしまう。彼を愛撫しながら、だらしなく濡らしてしまった粘膜に。

 痛いかもしれない。痛いまま離れないかもしれない。そう思うと、腰が退ける。が、感覚のない足では動けない。

 更に、冷気が近づく。彼の嬉しそうな表情を見つめながら、私は許しを乞う。無駄だと判っていても、許しを乞うことで、一層、粘膜が濡れてしまうから。

「だめ・・きっと、痛いから・・ああ、花びらが凍っちゃう」
「冷やしてあげるよ。火照らせて、淫らなんだから」

 交叉した手を握りしめて、唇を噛み、目を閉じて堪えようとした。

「目を閉じない。私を見てなさい」

 彼の声に顔を上げた瞬間に、花びらが灼けた。思わず悲鳴を上げる。腰が動かない。冷たさは、すぐに痛みに代わる。

「い・・うぅ・・いたい」

 痺れた足で後ずさりをしても、凍ったグラスが花びらに張り付いてしまった。

「ダメダメ・・ああ、痛い・・あそこが、とれちゃう」

 閉じそうな視界の中で、彼は笑顔のまま腰を下ろすと、私の腰に手を伸ばした。

「ぃ・・ひいい・・あああ」

 グラスを押し付けたまま、小さく左右に転がした。そうしながら、もう一方の手で私の乳首に爪を食い込ませて捻り上げた。

「ほら気が付いた。もう凍っていたんだよ。静かに心を冷やされて、貴女は私の人形になってたんだよ。何も感じなくていいんだよ。私・・以外は」

 花びらの痛みが遠くなった。乳首の痛みが甘い痺れに変わっていった。