予期せぬ甘さに
あれ・・こんなに、だったけ。油断すると意識が腰からの快感に埋もれそうだった。
「どうしたの?」
揺らしていた腰を止めて、貴女が怪訝そうな顔をする。
「いや、大丈夫・・気持ちイイなあって」
「大丈夫って、変なの」
私は貴女の腰を両手で包んで、前後の揺らし始めた。硬さを根元から先端まで締め付けられながら、奥の方で貴女のシコリを感じ取る。
「いいなあ。こんなだっけか」
つい、口にしてしまう。そんな言葉には女は敏感に反応する。喘ぎ始めた唇を閉じて、眼差しに焦点を結ぶ。
「さっきから、何かと思えば、そういうこと言うわけね」
地図しか読めない男は、不意打ちに弱い。想定外には策略も浮かばない。特に、こんな快感を受け続けているときには、前頭葉は麻痺したままだ。
「率直に素直な気持ちだよ。凄くイイ」
貴女が身体を前のめりにして、両腕で私の肩をつかみ体重を載せる。
「誰かと比べたでしょ」
力を込めて揺らされると、余計に快感が腰を溶かす。
「まさか、違うよ。いつもより今日はいいなあって」
「本当かしら」
「あ、そうだよ。こんな昼前の時間にキスしたりしないから」
まだ、お昼まで一時間はあった。お昼の時間に抜け出して交わる事や、夜の時間を過ごした後に、昼下がりまで触れていることはあったけれど、ウイークデイのこんな時間に、貴女の部屋で交わったのは初めてだった。
「だから、かな。いつもと違う感じだから」
「ふふ・・良かった。この・・」
貴女が人差し指で、私の額を突いた。
「この脳みそで他の女のことを考えていたら、頚絞めるとこだった」
「頚じゃなくて、違うとこはいくらでも絞めて欲しいけど」
そう言いながら、貴女の両肩を押し返した。二人の角度が深くなり、私の先端が貴女の女に突き当たる。
「・・は、あああ」
綺麗に背が反って、桜色の乳首が張り詰めた。鈍い光に乳房の肌理が浮き上がる。
窓の外、幾筋もの光の帯が空から降りていて、天使の梯子をゆるりを白鷺が舞う。心地よい美しさに、時間の長短は関係ないのだろう。
予期せぬ快感は、刹那でも甘く心を刻む。