空中楼閣*R25

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生命の秘密は宇宙の秘密

 とても久しぶりだったと思う。いつもの道をいつもよりもずっと遅い時間に車を走らせていた。

 数年に何度か、そんな気分に陥ってしまう。自分という存在が感じうる全ての世界と繋がっている感覚。

 丁度、手袋の指の一つになったような感じなのだ。自分は、根っこで全てと繋がっている。

 路肩で汗を流して工事をしている人とだけでなく、すれ違うドライバーだけとでもない。街灯の上にとまって遥か遠くの風を眺めているカラスとも、命の最後に向かって全速力で鳴いている蝉とも、キラキラと照りつける夏の終わりとも、全部と繋がっている気分になるのだ。

 それも手袋の指が全部、おなじ価値で繋がっている感じ。そうそう、生命という世界に一匹だけのアメーバーがいて、そこから無意識に、偶然に、突き出た触手の一つが自分という存在だ、という感覚。

 数年ごとのそんな感覚に襲われる。それは大抵、太陽が穏やかに輝く時間だ。

 自分が年を経るにしがって、その感覚に漂いながら思う事が変化していく。最初は高校のときだった。一体感で涙が出そうだった。それだけだった。

 ある時には、自分の存在していることが幸せに思えた。ある時には、誰もが懸命なんだ、と思えた。

 そして昨日は、自分はもっと動かなくては、と思った。生命の一員として、今、ここで満足したり、残りの人生をぼんやりと費やしている場合ではないと。

「私とだけにしてね。一体感は」

 貴女の声に、ふと我に返る。残りの時間を、どう過ごすべきだろうか。なんだか、こんな話を前にも聞かせた気になってきた。