空中楼閣*R25

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妄想な日々

 膝立ちになって両腕を背中に回すだけで、貴女はいつものように顔を少し上げ、目を閉じる。

 僅かな静寂が貴女を愛撫したかのように、赤い唇が微かに開くと、もう肌の温度が熟してしまう。

「膝を開いて」

 その言葉だけで、滴り始めるはず。音も無く、床を滑って膝が左右に広がって行く。タイト気味のスカートが太腿を這うように捲れ上がる。

 品よくラメがはいったストッキングに夜景が反射したみたいに煌めきが宿って、シルクのような光沢のスカートに包まれた腰が、心なしか後ろへと突き出される。

 フローリングの床材に揺れる蝋燭の光の中に、一筋の銀色が降りて来たような気がしたのと、貴女の吐息が響いたのは同時だった。

「でて来ちゃいそう・・」

 胸を反らして、眉根を寄せた貴女が天井に向かって呟いた。

「まだ、だめだよ。産まないようにしなさい」
「あ・・だって」

 スカートの中で貴女の腰が震えた。

「腰を締めて、落とさないように」
「・・ああ」

 意識して締めるほど、それは貴女を刺激する。

「だ・・だめ」

 拡げた膝が床を滑って、一瞬、よろけてから腰が波打った。スカートの中から光がぶら下がった。

 幾つもの細かく透明なクリスタルを連ねた鎖が、不意に落ちて来て、床すれすれで留まった。

「チェーンが垂れさがった。随分と濡れてそうだよ」

 私は貴女の前にしゃがみ込むと片手を膝の間に伸ばす。貴女の部分から連なる鎖を掌に受けて、親指で撫でた。

「ヌルヌルだね」

 反らした胸の呼吸が止まって、貴女が唇を噛んだ。

「何だか・・だめ、勝手に・・」
「勝手に?」
「子宮が震える」

 後ろ手に交叉した手を握りしめているらしい。貴女の肩が上下する。きっと赤いネイルが掌に食い込んでる。

「膝をもっと開いて。花びらはきつく閉じなさいね」
「そんな・・だめ。あ、意識が」

 膝が崩れるように開いていく。貴女から垂れ下がった細いチェーンの輪に、私は人差し指を通して軽く重みをかけた。

「うっ・・んん・・だめ」
「アヌス、締めなさい」

 天を仰いでいた貴女が、今度は顔を伏せて静かに左右に首を振った。

「しかたないなあ。じゃあ、産んでもいいよ。ほら、手の上に」

 スカートの間にかざした掌を花びらへと近づけた。

「ああ・・どうしたら、いいの、ああ」
「ほら、産みなさい」
「だって、締めたら・・出で来ない」

 もう一方の手で貴女の顔を上げさせて、うなじを抱くようにしてキスをした。

「おしっこする感じだよ。してごらん・・私の掌に」

 貴女が濡れた目を開くと同時に、鎖にかけた指に力を加えた。

「あ・・だって、汚れちゃう」
「ほら、いつまで産めないよ。おしっこしていいよ」
「だ、だめ。そんな引っ張ったら」
「産みなさい。ほら、手の上に」

 貴女が息を吸った。胸が持ち上がってすぐに腰が震えた。

「あああ・・」

 ぼとり、というように急に手のひらが重くなって、暖かくなったスワロフスキーが白い蜜に塗れて産み落とされた。

 数滴の貴女が追いかけるように溢れ出て、大粒のクリスタルの濁りを洗った。

「ほら、産まれた。綺麗なプレゼント」

 貴女の卵が、私の手の中で羊水に濡れていた。