空中楼閣*R25

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唇重ね

 見つめ合うだけで距離を失ってしまうような視線を、不意に塞がれた。

 塞がれた分、感じ取れる。キスを奪われて、唇から意識が失われるように空間の中で自分を切り取っている境界線が溶けて流れ出す。その感覚がいつもより鮮明に尖っていて、痛いくらいの痺れに襲われる。

 軽く腕を後ろへと引かれただけで、腰から椅子に落ちた。目隠しの布の存在とは無関係に、私の視線は塞がれて目蓋に軽い圧力を感じる。

 彼は、決して私を物理的には拘束しない。彼の言葉と彼の仕草が私の身体と私の心を身動きできないように縛り付ける。目蓋を覆って軽く結ばれた布、手首に柔らかく巻き付く彼のベルト、どれも少し動いただけで解けてしまうのに、私は動けない。

 スカートが捲り上げられ太腿が晒されると、彼の手の動きにシンクロして腰を浮かしてしまう。ウエストまで手繰られたスカートの裾から腰のショーツへと指が触れる。

 交互の膝を浮かし、脹ら脛を滑る薄布は、きっと私の蜜で湿っている。ヒールを浮かして取り去った小さな下着を、彼は私を見下ろしながら白く染みた部分を指でなぞっているだろう。

 ああ、腰が熱を帯びる。待ち望むように、彼が触れた膝を開いて肘掛けの預ける。淫らな女の匂いが鼻をくすぐった気がした。椅子を汚してしまいそう。

 微かに残した飾り毛を彼の手の甲が撫で上げた。

「流れ出してるよ」

 ああ、もうダメだ。腰が勝手に震え出す。

 恥ずかしさを覆う両手は背中で括られて、巻き付いているだけの紐がきつくなる。私の心に食い込み始める。

 彼は揃えた指を女の膨らみに添えると、殊更ゆっくりと辱めながら左右に押し拡げる。晒されていくのに、腰を突き出してしまう。両膝を載せられた肘掛けに押し付けてしまう。もっと見て、私を。

 聞こえないはずの音が耳に届いた。微かな蜜音。閉じていた粘膜が内側を見せて開く音。

「最初のキスは、どっちの唇に欲しいのかな」

 欲張りな私に彼が意地悪を言う。

「キスは・・」
「だって、ほら欲しそうに硬くなってる」

 無防備になった敏感な突起の先に、桜色の蝶が止まったみたいだった。