空中楼閣*R25

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白磁の滑りと真紅のルージュ


 魅惑的な唇と濡れた視線だった。眩しいくらいに白い肌だった。

 窓からの薄光に泡立った肌がエロチックに息づいて、微かな吐息が柔らかな唇を震わせながら、大きく小さく波打った。

 貴女が読みたいと言った宇宙物理学の本が、緑色のハードカバーの角で貴女の裸の肩を微かに突き刺さしている。二人で揺れ合う間に、カウチの背もたれからずり落ちて、貴女の肩で止まったらしい。

 空の明るさを追い抜くように、時々、雨だけが激しくなった。

「もう、行かなくちゃ」

 貴女の声に、乳房を噛んでいた私は名残惜しくて、濡れて硬くなった乳首の付け根に、もう一度、歯を立てた。

「あ・・ん」

 豊かな腰が揺れて、背中が浮いた。肩に触れていた本の角が、白い肌に赤く細い線を短く描いた。

 物理学の本のために私に抱かれたはずなどないのだけれど、それでもそんな愚にもつかない妄想をしてしまうほど、その赤い線が私を嫉妬させた。

 いきなり手を伸ばして、ハードカバーを床に投げ落とす。それを追いかけた貴女の視線が悲しげな、気がした。まさか、そんなはずはないのだけれど。

 閉じかけていた貴女の膝を大きく折り曲げて、腰を拡げると、さっきまで交わっていた花びらを口に含んだ。

 雨の音に負けないくらいに、大きく淫らな音を響かせて貴女を頬張った。その音とキスの強さに、貴女が藻掻いて身悶える。

 吐息が乱れて声になり、大きくなって悲鳴になった。力強く腰を震わせながら「お願い、止めて」と呻くように私の髪をまさぐった。

 そのまま貴女の声が聞こえなくなって、痙攣が続くまで花びらをキスで抑え込んだ。

 思い出すように震えながらも、ようやく眼差しが焦点を結んでから、貴女は言った。

「本当に帰らないと・・でも」

 起きあがって私に抱きついた。

「もっと欲しい。中に欲しい」

 私は、白い肩の赤い痕跡に舌先を這わせてから、貴女の乳房をつかんで押し倒した。

 紅いルージュがすっかり溶けてしまって戦慄く唇を静かに犯しながら、もう一度、貴女の背中を引き寄せて腰を深く沈めた。貴女の紅を白く満たすために。