空中楼閣*R25

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貴女のカタチ

「そんな事を言われたら、どうしたら良いのか・・」

 貴女の困った顔がとても可愛い。私は、どうしても少しだけ貴女を虐めるのが好きみたいだ。困った男だ。

「女性はキャンバスに新しい恋を上塗りするのでしょ。だから、そのキスの仕方は」
「え・・?」

 ほら、困った顔をする。

「女性って、キスの仕方を好きになった男性に合わせて行くんだよね」
「ええ・・まあ、そうね」

 だから、ふと思う。貴女との初めてのキスのとき、貴女のキスは、まだ一つ前の恋のときの唇のカタチだったのだろうな、と。

「相手と初めてするキスって、誤魔化せないでしょ。相手に合わせようがないから」

 そう、一つ前の彼が教えたキスの作法。

「そうよね。だって、最初はぎこちなくて、少しずつ馴染んで・・」
「緊張もするしね」
「そうよ。そう、緊張するわ」

 そうだ、貴女はキスを私に合わせて少しずつ修正をする。開け過ぎた唇を窄めたり、上唇から下唇に位置を変えたり、舌先を泳がせたりして私に応える。

「男の人だって、キスを合わせるでしょ?」
「そうだね。でも、最初のキスで貴女を解かないとね」
「じゃあ、どうするわけ?前の彼女と同じキスなんて嫌よ」

 男性は恋を蓄える。いくつものキスから、貴女へのキスを創り出す。貴女だけを溶かすキスを。

「そんな都合の良い事できるわけないじゃない」
「でも、溶けそうって・・」
「溶けそうだったわよ。最初から」

 恋の歴史から学ばない男性に、新しい恋を抱き締める資格はない。

「女性は抱いてもらいたいから、新しいキスに自分を染めていくのね」

 そうだよ。貴女のキスは一つ前の彼のカタチ。だから、私は貴女とキスをするたびに、少しずつ私のカタチに変えて行く。前の彼を貴女から消すように。

「キスだけじゃないよ。腰の開き方も変えてあげるからね」

 キスも身体も貴女の花も、私のカタチに変えて行く。