空中楼閣*R25

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硝子箱

拘束願望

多分、泣いていたのだと思う。哀しいわけでもなく、辛いわけでもなかった。それよりも、痺れるような快感に犯されていた。 気がついた時には、頬が濡れていた。目の下が痛かった。大きな声で泣き叫んでいたような気がした。全てが崩れ落ちていた。見栄も外聞…

ガラス窓の会議室

隣りの部屋から、会議を始まりを告げる声が聞こえる。 私の向かい側のデスクに居る社員の声だ。何かと訳知り顔で仕切りたがるが、そのくせ議論の内容すら理解していなくて、上司から本質を問われると見当外れな回答する男だった。 その男の声は頭の上から聞…

覚醒する世界

自分の秘部すら見たことが無いのに、女の身体には持ち主すら知らない感覚に満ちている。 彼に触れられる部分の全てが、自分のものではなくなっていく。セックスとはそういうものなのだろうか。だとしたら、今まで私は随分と遠回りをしたような気がする。 セ…

・・零れ落ち

彼にとって、私が邪魔になってしまうなら、彼は言うだろう。「水槽、開けてくれるかな」 私にとって彼が要らなくなったなら、私は自分で水槽を後にする。多分、彼は私を笑顔で見送ってくれる。 でも、彼が水槽を開けて欲しいといって、私は水槽に居たいと言…

溢れ出て・・

落下する水の音は、次第に耳から消えて、無意識の心を揺らす心地よい音になる。 アクリルで作られた透明な箱には、オーバーフロー式の海水が蒼く静かに煌めいている。彼が創った世界に、私は棲んでいる。 箱は上下になっていて、隠れている下の箱では、上の…

蜜に溺れる

まるで、もう一つの性器みたいじゃない、と思ってしまう。 拡げた私の腰に顔を埋めて、彼がキスをくれる。粘膜で出来た触覚みたいな舌を尖らせて、一番、敏感な部分に留まっている。 じれったいような刺激に快感が広がって、腰は自然に波を打つ。背中が浮い…

白昼夢に誘われて(3)

沈み込んだ意識が闇の中から浮かび上がってきたかと思ったら、見開いた瞳はまだ暗闇に包まれていた。身体が重く気だるかった。 火照った肌が濡れて、夜風が気持ちがよかった。「いけない。また眠ってしまった」 そう思いながら暗くなった部屋の天井を眺め、…

白昼夢に誘われて(2)

規則正しい振動が汗ばむ身体を腰から揺らした。それが、電車の揺れなのか、それとも男が突き動かすせいなのか判らなかった。 座席がほとんど埋まった昼下がりの車内に、途切れながら響き渡る声が自分のものとは思えなかった。潤んだ視線の先では、濡れた飾り…

白昼夢に誘われて(1)

夜気を含んだ風が頬を撫でた。その冷ややかさに目蓋を開いた時には、もう部屋の中は薄暗くなっていた。汗ばんだ首筋を手で拭うと、驚くほど濡れていた。 頭を少しだけ持ち上げて、枕代わりに敷いたタオルを引き抜いて汗を拭った。微睡みから目覚めきれない肌…

指に宿るのは

手のひらの中の細かな振動が快感を誘い出す。甘い痺れが腰を包み込んで、融かし始めた。曲げた膝を伸ばしたくなって、足の指を折り曲げてしまう。 埋めた人差し指と中指が、粘膜越しに電動玩具の振動を感じていた。「・・ああ」 吐く息が上擦って声が溢れる…

自分へのご褒美は

急に甘いものが食べたくなる。ランチのかわりに、彼に頼んで老舗パーラーのフルーツ&ハムサンドを買って来てもらった。 二人で裸になって、明るいベッドで縺れ合う。窓の外は夏の残りの強い日差しが眩しいくらい。 建物の向かい側は公園になっているから、…

ドール・ハウス(4)

窓ガラス越しに青い空が何処までも澄み渡っていた。透明を幾重にも塗り重ねると青くなるのだろうか、と思いながら見上げている間に男がキャミソールを脱がせ始めた。 されるがまま両腕を上げて全裸になる。濡れたお尻を急に寒く感じて、乳房の先が硬くなった…

ドール・ハウス(3)

二本の指に男の指が割り込んで来た。押し付けられて拡げられる感覚が、霧のように意識を曖昧にした。「ああぁ・・だめぇ」 ルールのことなど考えていられなかった。 実のところ、最後にはいつも大きな声を上げてしまっていた。声を出すなと言われて堪えてい…

ドール・ハウス(2)

男の手が花びらの右脇に触れて意識を引き戻された。全てが曝け出されていた。皮膚を開かれて冷たい刃が触れた。「ここまでは毛深いのに、途中からは急に短いのだね。お尻の周りにはほんの僅かだ。アヌスの周囲もツルツルにしてあげようね」 自分で見下ろす限…

ドール・ハウス(1)

二時間ほど前にこの家の扉を開け、玄関脇の階段から二階に上がった。この部屋には南向きの出窓があった。その窓からは河川敷の野球練習場を見下ろすことができる。 窓の左側にあるソファーで男が手招きをした。男の前に立つとショーツを脱ぐようにと言われ、…

天空の桃林

今度は空中なのね、と伝えると、硝子の箱はどこにでも作れるよ、と彼から返事があった。 確かにそうかもしれない。彼は、透明な閉鎖空間が好きなのだから、それが地上にあろうと、空高くにあろうと関係ないだろう。 彼の部屋で蒼い光に揺れる水槽も、植物園…