空中楼閣*R25

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拘束願望

 多分、泣いていたのだと思う。哀しいわけでもなく、辛いわけでもなかった。それよりも、痺れるような快感に犯されていた。

 気がついた時には、頬が濡れていた。目の下が痛かった。大きな声で泣き叫んでいたような気がした。全てが崩れ落ちていた。見栄も外聞も、羞恥心も。

 全部が溶け出したのだと思った。溜め込んでいたものが溢れ出た。沈殿していた澱が、吹き出すように流れ出た。涙となり、涎となり、声となり、体液となって溢れ出た。

 彼が部屋のドアのカギを締めた時、もう私はハシタナイほど濡れていた。内腿を滴り落ちるのではないかと、思わず膝を擦り寄せた。それがいけなかった。

「あ・・」

 彼は、私の吐息を見逃してはくれない。部屋という箱が、彼の支配する世界になっていた。

「そこに立って、下着を付けていないか見せなさい」

 私は俯いたまま、スカートを持ち上げた。

「もっと、捲り上げて」

 腰の奥の熱が甘くなって行く。崩れそうな膝を寄せながら、震える手でスカートの裾を捲り上げた。

「上手く剃れたじゃないか」

 彼が命じた通り、飾り毛を自分で剃って来た。

「その椅子に座って、後ろまで剃ってあるか見せない」

 私は戸惑って周囲を見渡した。

「後ろにある椅子だよ。そこに座って腰を突き出して開きなさい」

 背後に椅子があった。肘掛けのある椅子は背を向けて壁に向かって置かれていた。椅子の正面の壁には、姿見が嵌め込まれていた。

 スカートを直してから、鏡に向かって椅子に座った。鏡が近い。

「早くしなさい」

 シトラス系の香りとともに彼の声が背後から私を椅子ごと包んだ。鏡の中で、私の背後に彼の胸から下が映っている。彼は何時の間にか、椅子のすぐ後ろに来ていた。

「肘掛けに片足ずつ載せなさい」

 胸が苦しい。腰を浮かして、座面の前へとずらす。パンプスの右足を床から浮かして膝を折り、肘掛けに載せた。左足も同じようにして腰を開いた。

 秘部を被うようにして太腿の間にスカートが垂れ下がる。

「もっと腰を鏡に突き出して、スカートが邪魔ですよ」

 秘密の粘膜が剥き出しになって鏡に映る。それだけで、濡れた部分の呼吸が荒くなる。

「もう、蜜を垂らしてるんだ。奥が見えるように両手で開きなさい。雌しべも剥いて」

 彼の声が、直接、頭の中に響き始めた。

 毛の無い部分は隠していた大人の女の淫らを露にしてしまう。幼女のような亀裂から臆面もなくはみ出した、卑猥な粘膜の花びらが蜜を流す。いやらしい匂いまで漂って来た。

「昨日、こんな格好でアヌスの周りまで剃ったんだね。鏡を見ながら」
「ああ・・嫌」

 視線を外そうとすると彼の声がそれを許さない。

「触れずにそのまま逝けるでしょ。イヤラシイ女なんだから」
「そんな・・の」
「ほら、もう内側から真っ赤になって迫り出して来てる」

 縦に二つ並んだ恥ずかしい粘膜が、意識とは無関係に収縮し弛緩する。その度に、私の内側を鏡に晒す。

「少し手伝ってあげようね」

 彼の手が頬に触れ、ゆっくりと私の唇を犯し始めた。指先が輪郭を丁寧になぞり、唇の弾力を確かめる。

「淫らな花びらだ。ここにも雌しべがある。コリコリと、いやらしい」
「あああぁ・・」

 大きな声が自然に漏れた。何かが外れたように、理性が霞んだ。その先の記憶が曖昧だった。

 唇を弄られ、自分で拡げた性器を見つめ続け、舌をつかまれ、喉の奥まで犯された。嗚咽して唾液で洋服の胸を濡らし、痙攣する粘膜の蜜でスカートに染みを作った。

 意識が浮き上がり、腰が弾んだ。視線が滲み、子宮が蕩けた。

 全てが熱となって中心を形作り、やがて堰をきって身体から流れ出した。声にならいない悲鳴を上げ、全身を波打たせた。彼の声だけが、意識の中で囁き続けた。

 気がついた時、頬が濡れていた。椅子に座った女が、鏡の中でしどけなく腰を晒していた。