事の終わり
時間の流れまでも変わってしまうことを彼に教えられた。
流れが滞るのでも、早くなるのでもない。時間そのものが「流れる」という束縛から自由になってしまう。自由になるのは、時間だけではない。感覚が理性から浮き上がってしまう。
震え続けるのが本来のように子宮が固くなったまま、小刻みな震動とウネリのような収縮を繰り返す。腰の奥のその部分が、私の五感を支配し始める。そして、理性の支配から解き放たれてしまう。
「ここも感じる・・でしょ」
ベッドに横向きになったまま、背後から抱き寄せる彼の指が私の右肩で螺旋を描いた。
「い・・ぅ、だめ」
感じないはずの場所が、感じてしまう。それも触覚の全てが快感に翻訳されてしまう。全ての神経が分岐点か何かで、すっかり性的な快感の中枢へと繋ぎ変えられたみたいだった。
彼の爪が肩の張り詰めた皮膚を撫でると、直結するように子宮が反応して、快感を脳へと走らせる。
「だから・・だめ、そんな」
膝が伸びて脚に力が入ってしまう。つま先が反って、それを合図に条件反射のように体が強張る。そのまま逝ってしまいそう。
「右半分に鳥肌。乳首までこんなに・・なって」
耳元で彼の声がする。肩に触れたまま、耳を甘く噛まれた。
「ひ・・ああああ」
全身が震えた。私、おかしくなってる。小さく逝ってしまった。
「ね、感じやすでしょ」
言葉と同時に彼の指が動く。肌を撫で下ろして、痛いほど尖った乳房の先を掠める。声を上げる間もなく、粘液が溢れでている場所を確かめられた。
一気に意識が霞んで、快楽の淵へと堕ちてしまう。ああ、トロける。
「あぁ・・また」
「また、何」
彼の指先が深くなり力が加わる。子宮が悦んだみたいに大きく弾んだ。
「い・・い、逝く」
「もっと逝って、何度でも。もっと深く」
時間が消える。そう、流れから離れて、時間という次元が消えてしまう。ただ、快感が私を支配する。快感という液体の中で漂うだけになる。
胸元を厚手のバスローブで覆われて、額にキスで意識が戻った。どこかに消えていた時間が、また流れ始める。
映像の記憶がない。感覚の記憶がランダムに残っている。肌の震え、乳首の疼き、腰のわななき、子宮の痙攣、喉から吐き出された嗚咽と悦楽。
頬に触れると濡れていた。また泣いたんだ。
「気持ちイイと全部、漏らしちゃうんだね」
彼が笑う。慌てて腰をひねって、シーツを確かめた。手のひらが冷たい。
恥ずかしさに腰が竦んだ。すぐに子宮が反応して、花びらから彼がとろりと溢れでた。また射精してくれたんだ。
思わず彼の首に手を回して、顔を見つめた。妙に嬉しい自分がいる。キスをした。二回、三回、四回、もっと。
「なんだか、タイムマシンみたい」
「え?」
「時間という順序から自由になる感じ」
「ん・・それ嬉しいってことかな」
「そう、もちろん、そうよ」
「よく分からないけど、嬉しいならそれが一番」
今度が深いキスをした。舌を絡めた。彼に吸われると腰が疼く。
私は彼の部分に手を伸ばした。熱を吐き出して穏やかになったその部分に指を絡めて、願うように欲望を口にした。
「ねえ、これ・・欲しい。もっと欲しい」
彼が困ったような呆れたような顔をした。
「もっと入れて、中に」
自分の言葉が子宮に響いた。
尽きそうもない熱が私を溶かし続ける。終わりのない欲望が時間を消してしまう。彼が腰を仰向けにした。私は絡めた指に顔を寄せて唇を開く。
彼の部分を見つめながら心で呟いた・・美味しそう。また、彼の名残がとろりと腰から溢れた。もっと、ずっと終わらない。だって、時間が消えるんだもの。