空中楼閣*R25

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日々を綴る

どこかに辿り着きたいのなら、
今いる場所に別れを告げる決心が必要だ。
 
・・J.P.モルガン

 昔、貴女に言われた言葉を思い出す。

「いつも上を目指してばかりで、疲れちゃわないの。今、居る場所で充分じゃない。今の幸せに何故、満足できないの」

 鳥かごみたいな鉄格子に囲まれた螺旋階段を昇る。

「何故、螺旋階段なの?」

 普通の階段みたいに、休憩できるような踊り場がないからだよ。

「途中で階段にでも腰を下ろして休めばいいのに」

 グルグルと遠回りしながら、でも確実に昇って行くんだ。

「ねえ、その鳥かごの中に青い鳥は居ると思う?」

 屋上に幸せがあると信じてるんだ。理由もなくね。

「そう。でも、屋上の青い鳥はどこへでも飛んで行けるわよね」

 そうかもしれない。だけど、屋上まで上がりたいんだ。眺めのいい場所が好きだから。

「私・・ここで待ってるわ。もう充分に眺めもいいから。ここで青い鳥が戻って来るのを待ってる」


自尊心を高く持っている人達は、
人よりも優れているように見せかけたりはしない。

自分を人と比較することに価値を見いだしてはいないからだ。
彼らの価値は「自分らしくあること」にある。
 
・・ナサニエル・ブランデン


 自分らしくあることに唯一の価値を見いだしている人達の事を、自尊心が高い人達という。

「相変わらずの捻くれ者ねえ。素直に感銘を受けるべき言葉なのに」

 自分自身に価値を見いだせないでいる人には、意味の無い言葉だからだよ。いつも自分が一番な人には、言われなくても判ってることだし。

「比べないと判らないじゃない。自分が一番かどうかなんて」

 違うよ。比べないから一番で居られるんだ。眺めのいい屋上があると思ってるから、階段を昇り続けられるんだ。

「なるほどね。思い込みの強い人ほど、自尊心を高く保っていられるのね」

 強く願えば、必ず叶う、と思ってないと馬鹿らしくて階段なんか昇れないよ。

「無理して昇らなくても、私は充分だわ。ところで、ブランデンって誰」

 さあ、誰だろう。誰でも良いさ。自分じゃなければ。

食欲なくして食べることが健康を損なうように、
意欲なくして学ぶ事は記憶を損なう。
 
・・レオナルド・ダヴィンチ


「いい言葉ね。その気が無ければ良い事が無いどころか、自分にとって毒になるってことね」

 性欲もなく交わることは、心を損なう。

「それ誰の言葉?」

 気持ちの無いセックスって互いにとって最低だと思う。

「性欲だけで心は要らないって事はないの?」

 性欲は、相手の全てを欲しがることだと思うから、全てというのは文字通り身も心も、そして未来も奪いたいと思うことかな。なにしろ自分の遺伝子を交わらせたいという欲望だもの。

「性欲の螺旋階段も昇ってるの?」

 そうありたいんだけど、貴女が此処で待ってるって言ったから。

「・・ああ、そうね。でも、そしたら私はどうしたら」

 それにしても、ノラ・ジョーンズの「Don't know why」って、いい曲だな。

「Don't know why」


日が昇るまで待っていた。
どうして、あの場所へ行かなかったのだろう。
貴方をベッドに置き去りにした。
 
なぜだか判らない。
私には判らない。
 
夜が明けた時、思ったの。
砂の中に膝を突いて
涙を集めたりしていないで、
遠くへと羽ばたけると。
 
心はワインに溺れたけれど、
あなたの事は永遠のまま。
 
果てない海へと泳ぎだして
あなたに溺れたかった。
 
でも、今の私は抜け殻になって
遠くへと車を飛ばすの。
 
想いはワインに溺れたけれど、
あなたはずっと私の胸に。
 
大事なことが貴方にはあるの。
貴方は走り出さなくていけないの。
 
なぜだろう、判らない。
でも私は離れるの。
もう空っぽになった体で。
 
どうしてか判らない。
でも、貴方のもとへは行かないの。
 
私には判らない。
なぜ、私は去って行くのか。
どうして貴方から去って行くのか。


 気の進まないことはしない方が良いから・・少し休むだら、一緒に昇れるかな。

「少しだけ休んで、私を待ってくれるの?」
 

充実した一日が幸せな眠りをもたらすように、
充実した人生が、幸福な死をもたらす。
 
・・レオナルド・ダヴィンチ