空中楼閣*R25

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創作楽市

 私をそのサイトに誘ったのは、貴女だった。知人が立ち上げるので、参加して欲しいとのことだった。

「お伽噺を信じていた頃・・」

 私が作品を寄せる代わりに、と、貴女は自身の淫らな物語をそう語り始めた。

「薔薇の花びらのベッドで、優しい瞳の王子さまに抱き上げられのを待つのが夢だった」

 女性達は、そんな夢を持っているものらしい。

「空想の世界を彷徨うのが好きだった私は、背の高い彼からいつも少し遅れて歩いていた。彼は振り返るたびにポケットからチョコレートの欠片を取り出しては、私の口に入れた」

 その時点で、貴女の花びらが濡れていくのが判った。

「ほろ苦い甘さで口を満たされながら、私は俯いて彼の後を歩く。彼が振り向き、また私の口に欠片を入れる。いらない、と首を左右に振っても黙ったまま口に放り込まれる。首を振る私を見つめる彼の眼差しは冷たくて、口を開ける私には微笑みをくれた・・ノーは許されないんだ、と私は思った」

 部屋の真ん中に置いた椅子に座って、貴女は時々、視線を床に落としながら秘密の物語を続けた。

「初めて訪れたマンションの部屋には、椅子が一つだけ置かれているだけで他に家具も何もなかった。私はその場で裸になるようにと命じられた。アクセサリーも腕時計も全て取り去るようにと」

 私は窓の外を眺めてから、貴女に言った。

「まるで、この部屋みたいだね」

 貴女はそれには答えずに物語をすすめた。

「裸になった私に、彼は椅子に座るようにと命じる。素肌に触れた椅子の冷たさに思わす鳥肌が立った。胸を隠そうとする私に抑揚のない、けれど有無を言わせない声色がそれを許さなかった」

 私は誰に言うともなく話しかけた。

「膝を、少しだけ開きなさい」

 貴女が息を飲み込む気配がする。用心深くヒールのつま先が浮いて、左右に移動した。スカートを気にするように貴女の両手が裾をつかんだ。

「彼は椅子の背に歩み寄ると、両腕を後ろに回した私に革製の拘束着を頭の上から被せた。黒い拘束着は上半身だけを腕ごと包み込んだ。呼吸も不自由なその革製品は、両乳房のところだけ丸く切り取られていた。絞り出されるように白い胸が突き出てしまう」

 私は目の前に居る貴女の胸の色を思った。桜色だろうか、それとも茜色だろうか。

「恥ずかしさと切なさで苦しくなっていく私に、彼は革製の目隠しをした。顔にぴったりと密着して、私だけが闇の中に放り込まれた。乾いた喉を舌に残っていたチョコレートの味がヒリヒリとさせた」

 心の中に意地悪な気持ちが湧き上がって来た。その意地悪さは、官能を刺激した。

 私の足元を見つめて言葉を紡ぐ貴女に冷静な声で、こう命じた。

「膝を閉じないまま、両腕を背中に回しなさい」