私には
肌に触れられると心まで甘く霞んでしまう。
キスだけで泣けてしまうものだと、誰かに言われたけれど、その時の私には判らなかった。
知らない方が良いこともある、と誰かが言っていたけれど、知ってしまったのならば、その快楽に溺れていたい。
「焦点があってないよ」
指先で私の雌しべに軽く触れながら舌を強く吸って、彼が笑った。
「え・・」
何を言われたのかも判らなかった。ただ、彼を感じ、自分を感じていた。肌と心を別々にしようなんて、最初から無理なことだった。
欲していたのは心なのに、肌だけを満たそうとした。今は、心だけでは切なくて、花びらの奥まで埋めてもらわなければ、呼吸すら忘れてしまう。
「どこに触れても、震えるんだね」
そうかもしれない。自分では、どうしようもない。彼の指が、声が、唇が、性器となって、私の肌から染み込んで子宮を揺さぶり、痙攣させる。
まだ、キスだけなのに、その先が欲しくなる。彼の火照りを受け入れたくなる。
「私、変かな」
彼は、黙って窓の外を見た。
「雨だね。静かな朝も、たまには良いな」
「私、変だよね」
雨の音なんか聞こえない。
「考えなくていいよ。肌のほうが素直なんだから」
彼の手のひらが私の潤みを包むように撫でる。雨音とは違う水の音が響く。
「ほら、もう欲しがってる」
「ああ、指を・・入れて欲しい」
「そう、それで良いよ。貴女は私の・・」
そうだった。私には悩むことは何も無い。
私は、彼の・・淫らなのだから。雨の音なんか聞こえない。聞こえるのは、私と彼の淫らだけ。