ガラスの箱で(6)
オークブラウンのフローリングには解かれた縄と白く濡れた玩具、淫らなカテーテルが放り出されていた。私は柔らかく湿った貴女の肩と腰を抱き寄せながら、沈めた腰を揺らしている。
赤ん坊を寝かしつける揺りかごのように、静かにゆっくりと貴女と交わる。硬くなった先端が貴女に突き当たるたびに、子宮が震え、貴女が唇を開き、眉根を寄せた。
抱き寄せた肌から、とても良い香りがした。愛液と汗と肌の匂いだった。
「キスして・・」
貴女がようやく声を漏らした。悦楽の海で溺れてしまった意識を取り戻した。
肩へと回した腕を首筋の後ろへ這わせ、貴女の頭を引き起こすように唇を重ねた。舌を絡ませる間に二人の腰も深くなる。
キスの途中で、また子宮が震え始める。そのまま快感の波が大きくなって、私の口の中に引き入れた貴女の舌まで振動が伝わった。
「うう・・あっ・・いい」
唇を離すと、貴女が背を反らして小さく戦慄いた。
「あ、すぐ感じちゃう。触れられただけで・・ダメ」
「眠っていたでしょ。私が交わって揺らすまで」
心地よさそうに閉じていた目蓋を開いて、潤んだ瞳で私を見つめ返して微笑んだ。
「うん・・一番、素敵な起こされ方だった」
私は軽いキスをして、また貴女を揺らし始める。
「気持ちイイ。ああ、凄く良い感じ」
「意識が飛んでた?」
「う・・うん。良く判らなかった。意識があるのかどうかも」
貴女が奥の方で私を捕まえる。
「感じてる?」
「感じてる。体の真ん中が勝手に反応しちゃう」
私の腰に貴女が腕を回す。
「もっと・・ぐぅって、奥まで・・して」
「こんな感じ?」
「あっあん、そう・・それ、もっと」
思いがけないほどの力で貴女の腕が私の腰を引き寄せる。
「で・・どんなだったの。意識朦朧?」
「えっ、ああ、そうね・・見えたの、光が」
光が見えた。どんな目の前が真白になったのだろうか。
「丁度ね、ガラスの容器とかの角が光ってるでしょ。白でも、七色でもない色に」
私は四角形のガラスケースを思い描く。
「その光が暗闇の隅のほうで光り出して、どんどん大きくなって。その光を捕まえたくて、藻掻くみたいに手を伸ばすのね。で、何度も体を伸ばしていると、向こうからやって来て、私、飲み込まれるの。その光に」
押し付けた快感の先端の鈍い感覚に酔いながら貴女の言葉を聞いていた。
「まるで、キラキラしてるガラス箱に入ってしまうみたいだね」
「うん、そうかも。ずっとそこに居たかった感じ」
私は自分のデスクの隅に置いてあるガラスケースを思いだした。デスクの日当りの良い場所でいつも煌めいているガラスの箱だった。
「ねえ・・したい。ねえ、もう一度して・・」
貴女の指が私の背中を這い昇る。
「一度だけ?」
「だめ・・沢山。ずっとずっと、してて」
ずっとガラスの箱の中に・・。