コットンクラブ
改装中の地下街でいち早く始めた居酒屋には、にぎり鮨のカウンターもあって、昼下がりというのに板前が三人も控えていた。
出羽桜を二合と刺身、焼き物を頼んだ。刺身は鯛にホッキ貝、鮪、烏賊だった。焼き物の軽く粕漬けにされた鰆は、酒粕よりも煮切り醤油の出汁が良く効いて、とても美味だった。
最後に握りを頼んで、腹ごしらえは終了した。
チェックインして最初のシャンパンはテタンジェを開けた。暮れていくビル街を見下ろしながら、お湯を使った。
頃合いよく支度をして、ナイトクラブへ向かう。ここでもシャンパン。
マネージャーが用意してくれたのは、ステージ真正面のボックスシートで、ステージ前のシートから二段程上にあって、歌い手の目の高さだった。
左隣りのボックスには、年齢差のあるカップル。その向こうのボックスは、いかにも起業家という感じの若い男性とモデルのような女性。右は中年男性の四人連れだった。
シートからは、店内の席が全部、見渡せた。ダブルデートや二組の夫婦連れ、似つかわしくないカップル、やたらと抱き合う二人、所在なげな女性二人、それにジャズ好きという感じの白髪の男性三人。
ステージ最前列は、カップルのその父親達だろうか。最後にウエディングの三次会とおぼしき男女六名が席についた。
開演前の食事は、アミューズはサーモンとオリーブにシューが添えてあった。アペリティブはロースト・トマトソースを添えたスズキのポアレ、メインは和牛ステーキとフォアグラにラズベリーのハニーソースだった。なかなかしっかりとした料理だった。
ジャズが始まる。心地よい音楽に揺れながら、マッカランの18年とオリーブを楽しんだ。
オレンジのネクタイをしたマネージャーの見送られて、部屋へ戻った。部屋にはローランペリエと良く冷えたベリーがセットされていた。
今度は夜景を眺めながら微かなダウンライトの中で、ブルーベリーを摘みながら、今日、二本目のシャンパンを空けた。ボーズのプレイヤーから流れるジャズのコンピレーションで部屋を満たしてから、眠りについた。
たまには、こんな週末も良いものだ。ああ、よく飲んだ。良く酔った。善く眠った。