空中楼閣*R25

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白秋の紅い実に(4) 


「うぅ・・ぁあん」

 桜色の花びらを歪めるようにして、貴女の指が蜜を弄る。

 濡れた指の節や品の良いネイルカラーに、白く濁ったのような粘液が絡み着く。それが貴女が溜め込んだ性の澱ものにも見えた。

 年老いた主を愛撫する動きに熱が加わり、唇からも音を響かせる。

「済まんが、あなたさえ良ければ、これに使ってやってくれんか」

 そう言われて、意味が汲み取れなかった。

「お願いです。ここで・・このまま入れて下さい」

 露骨な言葉を貴女から聞いて、やっと意味が飲み込めた。眺めるだけでなく、交わって欲しいと、言われているのだ。

 確かにバスタオルの下で、私は充分すぎる程になっていた。

 ただ、現実味が失われていた。今は、何時で、ここは何処なのだろう。私は秋の陽射しの中、眩しさに目を細めながら道を歩いていた。その時から一時間も経っていないはずだ。

 それなのに、同じ陽射しの中に淫らな光景が映し出されている。上品そうで美しい貴女が、淫らに口と指を使いながら、私にして欲しいと言う。

 片手に黒い日傘を差して、窮屈そうに膝を折り曲げながら自転車に乗っていた貴女が、今、白髪の男の部分を口に含み、私に花びらを曝け出し、アヌスまで濡らして懇願している。

「ああ・・欲しい。奥まで、下さい」

 もどかしいように貴女の腰が左右に揺れる。現実でも、そうでなくとも構わなくなって来た。

 私はソファーから立ち上がった。巻き付けていたタオルを外し、硬くなった部分のために脱ぎ難くなった下着を取り去った。

 身悶える裸の腰に両手を伸ばすようにして、近づいた。

「欲しいですか。ここに」
「・・あああ、早く下さい。欲しいです」

 両手で腰の丸みを抑え込んだ。触れた瞬間に、貴女が大きな声を上げ、背を反らした。貴女の指が二本、折り曲げられて花びらに沈んだ。

 沈めた指を、すぐに引き抜いて、蜜を絡めて濡らしたまま、私の部分に触れようと手を伸ばす。

 私は少し意地悪な気持ちになった。貴女の指から腰を退いて、その場に跪いた。

「どこに何が欲しいのですか」

 貴女の口から、もっと淫らな言葉を聞きたかった。貴女の主の前で、そうさせたかった。貴女が彼の持ち物であることに、嫉妬を感じていた。

 私は貴女の花びらと濡れた指に顔を近づけて、こう言った。

「いやらしい匂いがするんですね。あんなに澄ました顔で自転車に乗っていたのに」
「・・はい。私、いやらしいんです。淫らなんです」
「だから、こんな匂いをさせて、見知らぬ男の目の前で濡らしてるんだね」
「ああ・・言わないで下さい」
「どうして、本当のことですよ」
「言わないで・・変に・・変になっちゃうから」

 私は声を少し大きくして主に尋ねた。

「彼女、狂ってしまうのですか」
「・・付き合ってやれぬ」

 返事の代わりに、老人はそう言った。

「貴女、淫乱なのですね」
「ああ・・そうです。イヤラシイ女です。お願い・・下さい」

 目の前で激しく指が音を立てていた。私は舌を伸ばして、その指を舐めた。

「あ・・ああ、嫌です。欲しい。入れて欲しい」

 彼女の手首を捕えて花びらを被わせたまま、指の上から舌を這わせ、音を立ててキスをした。

「焦らさないで・・ああ、ねえ」

 啜り泣くような声になる。

「誰のどこに、何が欲しいのですか」

 貴女が手をずらす。紅く火照った粘膜が内側を見せて呼吸する。

「ああ・・ここに」

 私は再び立ち上がって、主の腰に顔を埋める貴女を見下ろした。

「ここは、何て言う」
「私の・・いやらしい・・おま・・」

 浮かせていた貴女の顔を上から押さえつけた。男の硬くなったものが、貴女の喉の突き刺さった。

 髪をつかんで、頭を押し付けたまま、私は指を貴女の中に沈めた。貴女の身体が大きく波打ってから、髪をつかんだいた手を離した。

 嗚咽が部屋の響いた。

「欲しいなら、自分の手で拡げなさい」

 嘔吐反射に肩を震わせながら、貴女は内腿の間に両手を差し入れた。

「両手の人差し指を入れて、自分で開きなさい」
「・・ああ、いやらしい」

 左右から埋もれた指で引き裂くようにして、貴女が自身の中身を晒した。

「私の何が欲しい」
「あなたの・・ペニス・・下さい」

 硬くなった先端を折り曲げた貴女の指の節にあてがった。

 引き延ばされたヒダが自転車を漕ぐスカートみたいに捲れ上がって、赤い果肉を剥き出しにした。陽射しが、その部分を明るく照らしていた。

 ベッドの横たわった老人は、静かに目を閉じたままだった。(終)