白秋の紅い実に(3)
濡れて震える粘膜を貴女の揃えた指が被った。中指を幾分、押し付けるようにして、その手がアヌスの近くから飾り毛の起伏のほうへと引き戻される。
後ろの粘膜の収縮とともに、二つのホクロが蠢いた。
「あ・・ああ」
男の腰から顔を上げて、貴女が喘いだ。
中指の爪が綻んだ花びらを押し開きながら、小さな果肉を撫で上げた。その突起の頂きに結ばれていた蜜玉が、指を濡らして、花びらに塗り拡げられる。
蜜が弾けるときの淫らな音がした。指を開いて、蜜の秘密を私に披露する。狭間の奥まで、陽射しが入り込んだ。
腰のうねりと共に、細かな横縞の粘膜が上下に分かれて口を開く。ゆっくりと透明な蜜が流れ出し、開いた指の股まで濡らしていった。
「見えます・・か。ああ・・奥まで、見て下さい」
喘ぎながら貴女はそう言うと、再び、白髪の男の部分に唇を使い始めた。
「私が言うのも、なんですが。なかなか美しいですよね。これの持ち物は」
「・・え、ええ。綺麗な色ですね」
貴女の吐息が大きくなった。
「仮縫いだけしますので、その間、代わりのズボンをと思うのですけど・・」
おずおずと貴女の家へ上がった私は、左膝の部分が裂けたズボンのまま、気後れして佇んでいた。
なにしろ、大きな家だった。玄関の天井も随分と高い。こんな場所のこんな屋敷があったのか、と関心してしまった。
「合いそうなズボンがないので、すみません。これで」
と、言った貴女の手には上等そうな厚手のバスタオルがあった。
「充分ですよ。縫ってもらえるだけでも、有り難いです。まだ、これから仕事もありますし」
貴女はにっこりと笑って、私を奥の部屋へと促した。
「こんな格好で申し訳ないですなあ」
縫い終わったズボンを手にもって現れた貴女は、それを私に手渡す前に、主の寝室へと私を招き入れた。
重厚なベッドに横たわった白髪の主は、私のほうへ顔を向けて無礼を詫びてから、こう続けた。
「それにご覧の通り、私は久しくズボンなどは穿いていないので、バスタオルが代わりで失礼しました」
「いえいえ。足が不自由でいらしゃるのですね。大変でしょう」
男は、それ以上は答えず、私もそれ以上の彼の不自由さへの詮索はしなかった。
「そこへどうぞ、座って下さい」
スボンを返してもらえないまま、私はソファーを勧められた。
「これが迷惑をかけました。傷は痛みませんか」
「大丈夫ですよ。私のほうが悪いのですから」
なにしろ、貴女の脚に見とれていたのだ。しかも、スカートの中まで気になっていた。
「私の身の回りを全て任せているもので」
男の言うように、貴女は彼の身の回りの世話をしていた。性欲の処理まで全て。いや、実はそうではないのかもしれない。性を満たしたがっていたのは、彼ではなく、貴女のほうだった。
「災難にまで遭わせてしまった上に、お願いをするのも気が退けるのだが」
どことなく灰色に見える瞳で私を見据えながら、そう言ってから、視線を貴女に移し、それから老人は窓の外を見た。
「あの・・私からのお願いなのです。妙に思わないでください。いえ、妙なお願いなのですけど」
貴女に頼まれ事をされるというだけで、依頼事の内容とは無関係に心が浮き足立った。
「はい。私に出来ることでしたら、何でも」
「でも、お時間が。先ほど、お仕事の途中と」
「それは大丈夫です。今日中に片付ければいいのですから」
「そうですか。良かった」
美しい唇が微笑んだ。それだけで、私は妙に華やいだ気分になった。腰には相変わらずバスタオルを捲いていた。
「お願いというのは、そこから見ていて欲しいのです」
「は・・はい」
私の方を見つめたまま、貴女が上着のボタンを外し始めた。私は声が出なかった。状況がつかめない。
喉が渇いて来る。これは、現実だろうか。
その間にも、貴女はスカートを脚から抜き去り、ストッキングを脱ぎ、私の方を向いたままブラの外し、躊躇うことなくショーツを下ろした。
秋の強い陽射しの中に、綺麗な曲線の全裸が浮かび上がった。白い肌に黒々とした飾り毛が淫靡だった。