刻印の悦楽
「あぅ、っ」
凍みる・・彼に噛まれた雌しべの、その右側だ。慌てて洗浄シャワーの勢いを緩めた。
逢うたびに、彼は必ず私に痛みを刻みこむ。
右の乳首の付け根だったり、後ろ手を強要された肩だったり、脇の下の痣だったり、そして今回は、雌しべの付け根が微かに切れたみたい。
交わりの最後のほうで、雌しべにキスをされた時、思わず悲鳴を上げた。痛みと快感が一緒になって、腰から背中まで貫かれていた。
自分でもいつもと違う感覚に驚いた。敏感な部分が、感度を急に増したみたいだった。痛いと喘ぎながら、止めないで、と思った。いえ、彼の髪をつかみながら、多分、声に出していた。
巻き取ったペーパーを怖々と粘膜にあててから、目の前で確かめる。水の染みに血はにじんでいなかった。
それにしても、洗浄の刺激が疼きが呼び覚まされたみたいに、重く甘い痛みを感じる。
いったい私の部分は、どうなってしまったんだろう。
「床に鏡を置いて、真上からしゃがみなさい」
彼の悪戯な声を思い出した。鏡を跨いで裸の腰を落とす自分の恥ずかしい姿が浮かんだ。きっと、卑猥な光景が鏡に映るんだわ。それとも間抜けな映像かもしれない。
ふと気が付くとだらしなく口を開いてた。
膝の上にあったショーツを足元まで下げて、交互の足をあげて下着を脱いだ。トイレから腰を上げて、裸の腰のまま部屋へ戻った。
化粧台の上にある小さな四角の鏡を見つめる。誰も居ない部屋。自分の部屋。鏡に手を伸ばした。胸が高鳴る。何かしてはイケナイ事を始めた気分だった。
頬が火照り出した。赤面を確かめたいが、化粧台の鏡を見る勇気がない。そんな勇気もないまま、腰を落として鏡を床に置いた。
鏡の中に部屋の天井が映った。見知らぬ光景に思えた。
床に突いた両膝を前へと進めながら、少しずつ開いた。鏡を自分のほうへ寄せれば済むことなのに、何故か自分から鏡へとにじりよる。
まるで床に鏡が固定されているかのような心持ちになっていた。
部屋の照明が鏡で一瞬だけ反射してから、裸の腰の下へと隠れて行った。
自分の飾り毛の下を覗き込むように、恐る恐る鏡を見つめる。暗くて萌えたつ陰りしか判らない。
「膝を突かないで、しゃがむのだよ。外でオシッコするみたいに」
彼はどこまでも意地悪だ。彼なら「そう」言うわ・・と、自分でも不思議なのだが無意識に頬が緩んだ。
片膝ずつ床から浮かして、腰を落とす。鏡の位置へと更に前へ少し進んだ。あられも無く開いた太腿の間へ視線を移す。
「紅い・・こんなに」
その光景を見つめたまま、指で粘膜を開いた。内側は透明な粘液に満ちていた。
「あ、濡れてる」
彼が私の部分を形容する声色を思い出す。花びらの上端で包皮を被った小さな突起が顔を出す。
「ここ・・かしら」
中指で、突起の包皮を手前に引き上げた。
「あ、痛っ」
包皮の右側に小さな爪痕のような裂け目があった。その部分を見つけて、急に嬉しくなった。痛い・・かな。そう呟きながら、指の先を生々しい裂け目に近づけた。
「うっ、あん」・・彼の刻印、ね。