空中楼閣*R25

*リンク先が不適切な場合があります。ご容赦を*

鬱々と雨模様

 ふと窓の外を見上げれば、一輪だけ夏椿が咲いていた。いつの間に、と目を凝らせば、他の枝にも今にも綻びそうな花蕾がぎっしりと並んでいる。

 もう、シャラの花が咲く季節なんだ。夏椿とは良く言ったもので、白い椿のような花はポトリと・・首から落ちて散る。 

 伸び過ぎてトトロのようになった庭木を植え替えようと庭師と話をしていたのは、今日の午前中だった。巨大に育ったスカイロケットと、ついでに、余り面白くないアラカシの三本立てを、すっきりさせたい。

 まあ、人間の都合で生まれた場所から生死をかけて植え替えられて、またまた、「面白くない」と命を絶たれるのも悲惨な生き様かもしれないが。

 残酷な心持ちにまでなって気分を変えたいのには、理由があるのかもしれない。

 そんな時は、本当に大切な事を見失っている事が多いのだ。見失っているから、判らない。それだけの事だけど、それだけと言えないから理由にも気付かずに焦るのだろう。

 やらなくてはイケナイ事が、沢山あるはずなのに、それが何だか思いつかない。それどころか、思いつきたくもなくて、ただ、鬱々と役にも立たない事をしている。

 結局、楽しむわけでもなくて、時間だけがツマラナイまま過ぎて行く。

 変えたい理由も判らないから、気分を変えようと思うのだ。多少の残酷さが、そんな時には必要なのだ。

 ソヨゴは、「冬青」と書く。冬でも深緑の葉があって、風にさわさわと音を立てて「そよぐ」から、ソヨゴとか、ソヨギとか、言うらしい。

「ああ、それが良い。漢字も好きだし、その冬青にしよう。下草になっているツツジも全部、入れ換えて、もっと短くスッキリとさせて玉竜を増やそう」

 まるで髪を切るように、命をすげ替える事にした。

 最近、立て続けに二枚、アマゾンの購入ボタンをクリックした。US3の「Hand on the Torch」と、Justin Timberlakeの「Justified」・・少しは、気分が変わるかな。

 気分が変われば、大切な事にまた気付くはずだ。見失っていたもの、それが貴女へのキスだったりしたら、その時は、貴女に謝らなくては。

 しなくてイケナイ事を全部、終えるまで、そこで待っててね、と。

 こうして私は、木々の命と引き換えに貴女へのキスをする。