空中楼閣*R25

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たまには・・日記

 音もなく佇む満開の桜の下には、いつしか桜色の影が望月に照らされて浮かび上がる。

 誰もいない夜の公園に、ただ一本だけの桜の木は、酔っぱらいの喧噪に乱されることもなく、花見の賑やかな賞賛に浮かれることもない。

 ただ、じっと咲き、静かに散って行く。

 時折、通りがかりの人が立ち止まり、じっと見上げて感嘆の溜息を深く吐く。おそらく思うに、桜にとって最高の誉れではないか。

 もっとも、そんな事は露にも気にせずに、ただ、ただ、春の闇の中、桜は咲き、佇み、花と同じ影を成す。

 私も、そっと独り、闇の公園に足を踏み入れ、満開の下に歩み寄り、見上げては、感嘆の息を吐こう。

 艶かしいとは、こういう時間のことを言うのだろう。