吊り人形
細い糸のような甲高い声が途切れ途切れになると、潤んだ視線が切なくなって、今にも目蓋が閉じそうになる。
「私から視線を外したら、貴女の指のほうを見つめますよ」
「んぁ・・あああ」
壁にもたれて腰を落とした貴女は、遠退く意識を繋ぎ止めようと髪を振り乱す。大きく拡げて折り曲げた膝頭が会議室のテーブルの向うで震えた。
私は椅子に座ったまま、じっと貴女の眼差しを見つめ返している。視線を落としても、捲り上げたスカートの下で、露になっているはずの粘膜は見えはしない。けれど、貴女には私の目に何が映るのかは、判らないだろう。
「そうそう、ちゃんと私の目を見て、声は我慢しないんだよ」
「ああ・・でも、誰かに」
平日の午後の会議室。誰かが、顔を出してもおかしくはない。部屋の外の掲示は使用中に換えてはあるけれど、それでもドアを開けて確かめないと気が済まない人もいるだろう。
まして、廊下まで聞こえそうな程に、悩ましげな声を出させているのだがら。もっとも、内側から鍵は締めてある。こっそりと貴女には気付かれないように。
「早く、逝かないと、誰かに見られてしまうかもね」
「だって・・そんな。目を開けたままなんて・・」
「じゃあ、閉じてもいいけど、イヤラシイところ・・見せてもらうからね」
貴女はショーツを脱いで、腰を落とし、床に突き立てたディルドをアヌスに埋めているはずだった。
そのディルドを滴りで濡らすほど、自分の指で花びらの奥を掻き回しながら、もう一方の手で雌しべを弄っているはずだ。
両手を使うのは、いつもの貴女の自慰の仕方だった。
「もっと、腰も動かしさないと」
「うぁあ・・ああ、でも、声が・・我慢できない」
アヌスを刺激すると貴女は叫び声を上げる。だから、ディルドを深く納めたままの腰を動かさないようにしているのは、判っていた。
「声を我慢してるんだね。私に逆らって」
大袈裟に芝居がかって声を荒げてみた。貴女の顔が瞬時に困惑し、哀しそうな表情になる。
私は椅子から立ち上がった。じっと貴女の目を見つめたまま、歩み寄る。
貴女は、今にも泣き出しそうな眼差しを、それでも閉ざさないようにと私を見つめた。
右足を床まで濡らしている貴女の腰の下へ差し入れた。革靴の先で床に張り付いているディルドを軽く蹴った。
「わぁあああ・・うう」
貴女の大きな声が会議室に響き渡る。
「ほら、早く逝きなさい。もっと声を上げて、こっちを見たまま逝きなさい」
私はそう言いながら、見上げる貴女の腰と床の隙間に差し入れた靴先で、コツコツとディルドを揺らした。
「ああああ・・ああ、ヘンにな・・る」
貴女は淫らな蜜音を立て、涙を零しはじめる。指の動きが激しくなって、靴先が貴女の飛沫に濡れ始めた。
「ほら、こうやって、腰を動かすんだ」
両手で貴女の肩をつかんで、上下に動かした。貴女が目を剥いたまま悲鳴を上げた。
「おぉ・・うう・・いく・・逝き・・ま・・す」
宙吊りになったかのように、貴女の体が後ろの壁へと弾け、一呼吸おいてから痙攣を見せた。
私の靴に液体が注がれて、床の上に水溜まりを拡げた。