日記(菜の花が咲いた朝に)
ひと息に、黄色に染まった。道の両脇で一面の菜の花が揺れる。
「菜の花と聞くと、あなたの『春の駅』という文章を思い出すわ」と貴女。
実は私も、あの光景を思い出す。ローカル線の無人駅で時刻表も必要ないほどにしか便がない列車を、あてもなく待っていたような春の日を。
そういえば、何故、私はあの日、あの駅で菜の花を眺めていたのだろう。貴女を待っていたのか、それとも貴女を見送った後だったのだろうか。
どこまでが現実で、どこからが仮想なのか。
昔からそうだった。時々、そんな世界へ身を置いてしまうのだった。子供の頃と違うのは、それを文字にしてしまうこと。ずっと根性が悪くなったということ。想像も出来なかったほど、厚顔無恥になったということ。