空中楼閣*R25

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点を連ねて

「この白いチョークの線は・・」

 そう言いながら数学の教師が左から右へと長い横線を黒板に描く。

「チョークの粉、つまり、点の連続だ。例えばここをゼロとする」

 その長い線の一カ所に人差し指の先を押し付ける。そこだけ微かに線が途切れた。

「で・・このゼロのすぐ右隣の数は何だ」

 聞き入る生徒を白くなった指の先で指名した。

「えっと、限りなくゼロに近い正の数」

 同意する教師の声を聞きながら、思った。

 今この時に限りなく近い未来と限りなく近かった過去は、なんとなくイメージできるのに、「今」この時が少しもイメージできないでいた。

 そうか、それは今がゼロだからなんだ。「ゼロ」は限りなく近い正の数と負の数の挟まれて、ようやく存在してるんだ。

 地面に立っている自分の足の影を思い描けないみたいに、今が判らないでいた。足を浮かした瞬間に、それが地面を踏んでいた影ではないのだから。

 最初から「ゼロ」だった。無いものは、最初から無いままなんだ。

 ただただ限り「なく」近いものたちに挟まれて、ようやく存在しているような限り「ある」命を生きている。

 存在とは、それだけだったんだ。最初から此処には何も無いんだ・・ゼロだから。

 では、気は何処にあるんだろう。