空中楼閣*R25

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柔らかな空気

 枯れ木になって初めて見えるものがある。

 ここ数日は朝の冷え込みがなく、空気まで柔らかい。冬空に広がった雲のお陰だ。凛と澄み渡る冬の青空も良いが、冷え込みが厳しい。

 10メートル以上はある高さの楠の巨木。その頂上に大きな巣を見つけたのは、風が冷たく晴れた日だった。カラスの巣だろうか、鳩だろうか。どんな鳥の巣なんだろう。

 親鳥は居ないみたいだから、もう空き巣なのだろう。茂った葉に被われていた時には、全く見えなかった。枯れてこそ見つけられたのだ。

 晴れには晴れの、曇りには曇りの、雨には雨の嬉しさと不都合がある。枯れてこそ見えるものもある。

 ただ、時の流れだけは取り戻せない。せめて重ねた歳月を穢す事の無いように、歩いていたい。