吐息の部屋で 〜冬の物語〜
貴女が髪を揺らすたびに、猫がミルクと舐めるような音がした。日が陰るとすぐに冷たさがフローリングから凍みてくる。
窓の外はとっくに暗くなっていて、多分、南の空には青白い月が輝き始めているだろう。
忍び込む冷気の中で私の部分だけが、貴女から潤んだ熱を与えられていた。
「口に・・頂戴」
濡れた唇が囁いた声が、薄暗がりの中で白く浮かんで見えた気がした。
「あげるよ。でも、一番、奥に・・だよ」
貴女は潤んだ瞳で頷いた。
「まずは含まないで、舌でもっと濡らしなさい。先端から付け根まで」
両手を交互の滑らしながら、貴女の舌先が私を探る。先端の裂け目から包皮の部分まで、細かく器用に舌を使う。
左右に揺さぶり、時々、唇を宛てがい、歯を立てる。それから、また舌先で揺らして、付け根へと向かう。
二人の間から貴女の唾液が滴り落ちて、正座した貴女の裸の太腿を濡らした。きっと床の上は、冷たくなっているだろう。
それでも貴女は熱心に私に熱を与え続ける。自分は凍えていいかのように。
私はその貴女の唇の奥へと硬さを含ませようとしている。貴女が嗚咽して全てを吐き出し、涙と唾液と鼻汁と胃液にまみれようとも。
「いいよ。さあ、上を向いて口を大きく開けて」
貴女は嬉しそうな顔をして、私を見上げ、与えられる苦しみを待ちわびる。喉の奥まで見えるように、貴女が口を開く。
「舌を出して・・もっと」
貴女が舌を出す。それだけで、嗚咽しそうに喉を震わせた。私はそっと舌の上にペニスを置いた。舌触りを確かめながら、ゆっくりと腰をすすめる。
前歯を掠めながら、奥へと唇を押し開く。貴女が苦しげに眉根を寄せ、すぐに嗚咽して肩を震わせた。見上げる眼差しから涙が溢れ出た。
「もっと奥まで欲しいよね」
泣きながら、貴女がけなげに頷いた。私は貴女の両頬を掌で包んで固定する。それから静かに深く、貴女を犯した。
反射的に喉を閉じようとする貴女の顔を引き寄せた。幾度か嘔吐する貴女の唇を見下ろしながら、腰を動かし始める。
「奥に欲しいんだよね」
その度に、貴女は呻きながら「欲しい」と泣いた。冷たく暗い世界が、灯りもつけないままの部屋の中に満ちて来た。
私は、吐物で汚れた床に貴女が倒れて啜り泣くまで、このまま交わり続けるのだった。夢か現かの境界で、二人。