雌しべの解剖
透明なネイルが行儀よく並んで、花びらの上端を拡げるように引き上げる。赤い頭巾が引き延ばされて、被われていた雌しべが姿を見せた。
貴女の唇をなぞった後に、可愛い舌の先で私の指を潤ませた。その滑りが乾かないうちに、そっと貴女の雌しべに触れる。
「この先端を柱頭・・」
「あっ」
羽枕を敷いて持ち上げた腰が跳ねる。
「動かないよ」
「無理よ・・そんなの」
「両手でちゃんと見せて」
花びらから香りが溢れ出す。
「先端は受精のために皮がなくて、粘着性がある」
「・・ああ。だめ」
貴女が頭を振ったので、傍らに置かれた植物図鑑のページの上で髪が揺れた。
「ほら、糸まで曳くもの」
「嘘、それは・・さっき濡らしたから」
貴女の突起が心なしか大きくなった。
「ここから付け根へと続くのが、花柱」
「ひぃ・・」
指を先端から花びらのほうへと下げて、爪の先を付け根へと滑らせる。綻んだ貴女の粘膜が呼吸して、内側を見せた。
「雌しべの付け根は、何て言うんだっけ」
「え・・ああ、え・・っと、子宮でなくて」
「子房だよ。まあ似てるよね。受精して実を結ぶんだから」
雌しべの先端で受粉して、花柱を導かれ、子房で結実する。
「蜜はここに溢れる」
指の腹で付け根を揺らした。貴女が背を反らして、腰を蠢かす。立てた膝が伸びてしまう。
「ほら、ちゃんと雌しべ、見せて」
下腹部を震わせながら、貴女が両手を置き直した。
「蜜、舐めてあげる」
「ああ・・ん」
上体を屈めて、顔を貴女に近づける。大きく口を開けて舌を伸ばした。
「あっ・・あああ」
しなやかな身体を仰け反らせて喘いだ。
上唇が貴女の指先に触れ、下唇が粘膜の熱を感じる。舌先が柱頭を捕え、花柱から子房へと降りていく。
子房に舌先を宛てがったまま、上唇に触れている貴女の指を私の手で導いて、花びらの外側で起伏を左右に拡げさせた。
「え・・何。そこ・・あっ、いい」
自由になった包皮を上唇で捲り上げ、子房を下唇で挟み込む。リズミカルに吸いながら、反応する雌しべを舌先で包み込んだ。
貴女が自分で拡げた花びらから熱が流れ出して、私の顎を濡らしていく。痙攣が大きくなった。逃げようとする腰を押さえつけて、舌先を踊らせる。
「ううぅ・・ああ、すごく・・」
貴女の声が高く細くなってから、顔を上げた。拡げられた足のつま先が、ゆっくりと伸びて張り詰めて、最後の小刻みに震えた。
震えが収まった後、身体を緩ませた貴女が呼吸を取り戻す。
「雄しべで受粉させてあげるよ。雌しべに」
「・・えっ、雌しべって」
身体を起こして、腰を貴女の太腿の間へと進めた。
「手で開いていて」
貴女に花びらを開かせた。そのまま先端で雌しべに触れると、包皮を捲り上げるようにして撫で回した。
「ああ、それ・・気持ちイイ」
先端から滲み出る粘液で、貴女の柱頭を潤ませる。
淫靡な音が響き出すと、機械仕掛けのように貴女の腰が跳ねて、両手を離して求めるように私の腰を探す。
白い咽を反らして、また痙攣が始まった。粘膜と粘膜が擦れあって、互いを硬く膨らませていく。体液が滲んで白く濁って来た。
「欲しい・・おね・・がい」
嗚咽した貴女の花びらが歪み、欲しそうに蠢いて呼吸する。快感の波が拡がって腰を揺らし、貴女の腕が宙をさまよう。
私の尖端は雌しべの柱頭を弄り続ける。貴女が何度も小さく達する。
「雌しべは、ここで受精するんだよ」
「嫌・・そんな。おかしく・・なる・・」
髪を振り乱し、片手が植物図鑑をベッドの端へと追いやった。快感に閉ざしていた眼差しが開いても、その視線がもう焦点を結ばなくなっている。
貴女の喘ぎばかりが大きく響いた。
「変になりそう・・はやく、欲しい」
「だめだよ。雌しべで交わるんだから」
「ああ・・いやぁ」
「じゃあ、少しだけ」
そう言って、私は腰を低くした。先端が貴女の粘膜の淵を感じる。そのまま深くすることなく、螺旋を描いた。
「ねえ、来て・・来て」
私は静かに顔を振った。
貴女の頬を歓喜の涙が流れ、声を失うまで、私は雌しべと交わることにした。何故って、貴女が壊れていくところを見たいから。
「どうして・・ああ、おねがい」
壊れていく貴女は、花びらを散らして果実を残す雌しべのようで、とても美しいから。
ほら、羽枕まで濡れて来た。