空中楼閣*R25

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薄明かりの朝


 雨上がりの朝、光の中でベッドの端に赤いリボンが丸まっていた。昨夜、貴女の肌に巻き付いていたリボンだった。


 昨夜、出かける前にコンセルジュに幅のある赤いリボンと安全ピンをお願いした。貴女が身支度を整える間に、三センチ幅の赤いリボンとハサミ、それに安全ピンが届けられた。

 部屋のドアの手間に姿見の鏡が嵌め込まれていた。私はその前に彼女を立たせると、スカートを捲り上げてもらった。

 淡い飾り毛が、心なしかシャワーで湿っていた。それに触れるか触れないかの位置で、太腿に赤いリボンを少しきつめに巻き付け、長さのあるまま蝶々結びを作った。

 随分な長さが余っていて、貴女の足元に垂れ下がっていた。

「動かないでね」

 そう言って安全ピンを手にとった。たくし上げたスカートで貴女からは私の手元が見えない。

「え・・何するの。痛いのは嫌よ」
「大丈夫だから」

 そうとだけ答えて、真紅の蝶々の結び目を安全ピンで貫いた。これで、歩いている時にリボンが緩まないだろう。次に、先が鋭くて良く切れそうなハサミを手にした。顔を上げなくても、何となく貴女の緊張が伝わった。

「リボンをピンで留めたよ。もう少しの間、動かないでね。痛くないから」

 私はわざと意地悪を言った。貴女の呼吸が震えている気がした。ゆっくりとハサミを使った。太腿の付け根に近いので、ハサミの先が貴女の敏感な部分に触れそうだった。

 ハサミの背の部分を貴女の花びらに触れさせた。

「あ・・嫌」
「動かない。危ないから」

 語気を強める私に貴女の震えが大きくなった。上質の布を裁断する音がした。赤いリボンとともに、数本の飾り毛の先が切れた。

 床に落ちた飾り毛を指で摘まみ上げた。

「ほら、動くから・・毛まで切っちゃった」
「ああ・・恥ずかしい。ごめんなさい」

 私の指から拭い取ろうとする貴女を制して、自分のシャツの胸ポケットにそれをしまい込んだ。

「もっとスカート上げて」
「え・・腰にもリボンだよ」

 腕をスカートの奥まで忍ばせて、リボンをウエストに巻き付けると背中で結び目を作ってから、貴女に足を開かせた。その結び目から両腿の間を通して花びらに添わせて、最後に前で蝶々を作った。

「あ・・嫌、だめこんなの、歩けない」
「しっかり結んだから、途中では解けないよ。さあ、行こう」

 未明まで開いてる店を探して、並んで腰を下ろした。歩いている間も、貴女は膝をふらつかせて、私の腕にすがっていた。店の椅子に腰を下ろした時、小さく叫んだ。

「どうしたの」
「あ・・これ、ダメ。リボンが」

 何度も愛撫を受けて敏感になっている粘膜を、赤いリボンが刺激し続けていた。帰り道、大胆にも歩きながらキスをした。手を握るようにして、スカートの前に触れたりもした。

 二時過ぎに部屋へ戻るとドアを閉めるのももどかしく、貴女は私に抱きついて深い口づけをした。

 私は貴女をソファーに座らせて、膝を開かせた。部屋の灯りを全部点けてから、貴女の蜜で濡れたリボンで、背中に回させた手首を縛った。

「もっと腰を突き出して、奥まで見えるように」

 貴女は見違えるほど大胆で淫らになっていった。明るい中で後ろ手に縛られ、腰を突き出すだけで、花びらから蜜を滴らせた。時間をかけて焦らしながら、辱めた。

 そのままの姿勢で私が硬くなったものを、とてもゆっくりと沈めた時、貴女は交わる部分を覗くようにしながら喘ぎ声を上げた。

「ああ、見える。凄く、いやらしい・・あぅう、入ってる」

 それから窓の外が仄かに明るくなるまで、二人は交わっていた。ソファーで、床で、そしてベッドで。


「おはよう。今、何時かな。寝坊しちゃった。あ・・リボン」
「おはよう、もう9時になるね。ほら、赤いリボンに白い染みが」
「きゃっ。止めてよ」

 貴女はリボンを慌てて手にとって、痕跡をちらりと確かめて、自分の後ろへと隠した。

「もう明るくなったのね。時間は早いなあ」
「また逢いたいね」

 貴女は視線を窓の遠くへ移して、返事のかわりに呟いた。

「一回だけって約束だったもの」

 私は起き上がっている貴女の元へ腰を下ろして、抱き寄せながらキスをした。唇を交わすと同時に指の先で潤みに触れた。

「ねえ、あなたのにキスしたい」
「いいよ」

 私は仰向けになる。貴女の髪が腰を覆った。熱と快感が私を包み込んだ。丁寧に、熱心にキスをした後で、貴女が言った。

「ねえ、上に乗っていい?」

 私は黙って貴女に両手を差しだした。腕の中に貴女の腰が入る。溢れ出る声とともに、貴女が私に降りて来た。

「ああ・・気持ちイイ」

 同時に二人で呟いた。貴女の身体が前のめりになって、私の胸に倒れて来た。温かい頬が、柔らかな髪とともに触れた。

「でも・・私も、また逢いたい」

 私はそっと髪を撫でて、腰を突き上げた。赤いリボンが視界の端で音も無くベッドから滑り落ちた。