宵闇の雨
「ねえ、締まってる?・・私」
「気持ちイイよ」
キスをしながら貴女の腰を抱き抱えるようにベッドから少し浮かすと、二人は更に深くなる。貴女はその姿勢で舌を強く吸われると、私を一層、締め付けて来るのだ。
「舌を吸われると締まるんだねって、誰に言われたの?」
「いいの、そんなこと・・あん、もっとして」
カーテンを開け放したままの窓の向こうは、すっかり暗くなってしまった。高層ビル群の赤色灯が遠くで呼吸している。
チェックインしてから半日が過ぎた。軽いランチをルームサービスで取っただけで、部屋に籠っていた。
半日を裸で過ごしている。まだ外が明るかった時に窓際で交わってからは、ほとんどベッドの上にいた。アメリカン・クラブハウスサンドも、結局、ベッドの中で並んで食べた。
シャンパンを空にした後は、ミネラルウォーターを飲んだ。交わっては喉を潤した。
「ねえ・・気持ちいいの」
半日の間に、表情が変わって行く。素直な欲望を求める濡れた眼差しが、とても淫らだった。
何度目だろう、貴女に腰を沈めているのは。数えることに意味は無いけれど、肌も粘膜も相手に触れていないと落ち着かなくなっていた。
12時間で貴女のあらゆる部分に触れた気がする。
髪に触れ、耳を口に含んだ。舌で襟足をまさぐり、鎖骨を撫でた。肩の丸みと腋のしたの柔らかさに歯を立てた。
手の平で乳房を包み、指で先端の弾力を虐めた。ウエストラインを辿り、背中の曲線を慈しんだ。腰の豊かさを抱き寄せ、飾り毛の顔を埋めた。
ペティキュアの足指を口に含み、踝にキスをした。膝を撫で、太腿を愛でた。
腰を大きく開かせると、貴女の蜜の匂いを吸い込んだ。指で触れ、舌を使い、唇で押し開いた。
柔らかな熱と透明な蜜に指を沈めて、子宮の震えを確かめる。幾度もの嗚咽と溢れる体液でシーツを乱してから、腰を静かに沈めた。
次第に大きく揺らして、深くで果てた。
果てた後に、戯れるようにして肌を撫で合った。腰を離してから、私は貴女のアヌスに口づけをした。貴女の吐息が遠くで聞こえた。窄まる粘膜を、唾液で濡らして解しながら、指を沈めた。
貴女は膝を折り曲げて、俯せのまま腰を拡げた。シーツを握りしめて、喘ぎ声を上げた。
粘膜が二本の指を受け入れるようになってから、私は顔をあげて貴女を抱き寄せた。
「ああ、恥ずかしい。後ろに指を入れられたの、初めて」
「嫌な感じ?」
「ううん、嫌じゃない。けど、なんだか」
「なんだか?」
「出ちゃいそうで・・恥ずかしい」
「もう、して欲しくない?」
「・・もっとして欲しい」
汗に冷えた肌を抱き合いながら、そんな言葉を交わした。
「あ・・イヤ」
腰を退くと、貴女が両手で私を引き止めた。
「・・抜かないで」
「また、出ちゃいそうだよ」
「出して、そのまま」
貴女の中で私が膨張した。同時に貴女も張り詰めていく。
「ああ・・いっしょに・・一緒に、逝って」
背中を反らし、私の腰を引き寄せながら、貴女が昇り詰める。私の腰が大きく波打った。
しばらく眠っていたのかもしれない。背中が冷えて、目が覚めた。貴女を起こさないように、静かに身体を捻って時計を探す。
11時少し前だった。窓の外で街のイルミネーションが雨に滲んでいた。
「お腹、空いたでしょ」
振り向くと貴女が気だるそうな眼差しを向けていた。
「そうだね。飲みに出ようか」
「うん。ああ、でも、このままでも良い」
「飢え死にしちゃうぞ」
「お腹一杯だもん。あなたで」
「吸い取られたから補給しなくちゃ」
「ふふ・・そうね。補給したら、また欲しいかも」
「よし、出かけよう」
私は貴女にキスをしてからベッドを抜け出した。
「あ、そうだ。下着、穿かないでね」
「ええ、ショーツ無しなの?」
「良いじゃない」
「良いけど・・途中であなたが出て来ちゃいそう」
「歩きながら、出しちゃうんだ。それ、淫らでいいね」
床に落ちていたバスタオルを手にして、私はバスルームへ向かった。