微睡みの午後
陽射しだけが強いが、窓からの風はさらりとした秋の風だった。涼やかな匂いと滑らかな肌触り。少し湿ってひんやりとした貴女の太腿に頬を預けた。
粘膜のフリルに薄膜を張ったようなストッキングの部分を爪の先で撫でただけで、粘液が糸を曳いている気がした。
頭の上のほうで、微かに聞こえる貴女の吐息が糸を曳いたせいかもしれない。この時間になって、ようやく蝉の声も遠くで聞こえ出した。
「濡らしちゃ、だめ」
「その前に濡らしてたくせに」
「・・だって」
顔を載せた太腿から貴女の声が響いて来る感じだった。
「だって、何?」
「今日は穿かずに仕事に来なさいって・・ああ」
爪先がストッキング越しにフリルを掠めた。
午前中をずっと私に視線の中、貴女は下着を付けずに過ごしていた。貴女と視線が合うたびに、夏用の事務服の腰をわざと見つめてあげた。
今、そのグレーのスカートは、会議用のデスクの上に横たわった貴女の足元で、脱いだままになっている。
私は椅子に腰を下ろして、目の前にある魅惑的な太腿を枕にしていた。二時間の昼休み、私の部屋には誰も入って来ない。丁寧に内鍵までしておいた。
時間をかけて、貴女をもっと濡らしていく。
触れるか触れないかの強さで、花びらから糸を紡がせて、昇り詰める寸前まで焦らしたら、午後の仕事に向かわせる。
時間が来て、この部屋を出て仕事をする間、私は自分の部屋のドアを開け放って貴女を見つめて続けてあげよう。
「ほら、音がしてきた」
「・・ああ、いや」
「私の部屋に匂いがつきそうだ」
「言わないで・・」
指先を花びらの潤みに押し付けた。声もなく貴女が仰け反った。押し付けたままで螺旋を描く。微かだった音が、はっきりと聞こえだす。
「あ・・いい」
細かなストッキングの織り目に透明な蜜が広がった。やがてそれが白く濁り出す。
「仕事に戻るときは、ドアを開けて行きなさいよ。貴女の匂いがこもっているから」
「あぅ・・ん、そんな、嫌・・です」
貴女の反応は、私の心をますます焚き付ける。
「ここ破いておくか」
両手の指を花びらの真上に突き立てた。
「だめ、それはダメ」
スカートの裏地に、ストッキングの裂け目から剥き出しになった花びらが染みを付けるシーンをイメージしてしまった。
「染みになるだろうねえ。スカート」
「ああ・・」
片手でストッキングの前を引き上げて、雌しべを捲り上げた。もう一方の手の人差し指の爪の背で、顔を出したピンク色を引っ掻いた。
「あっ・・ああ、だ・・めえ」
声が大きくなった。開け放っている窓から外まで響きそうだ。
「事務室だけじゃなく、窓の外まで聞こえそうだよ」
私は指を動かし続ける。雌しべが大きく紅くなる。
「う・・うう」
貴女が手の甲で口を塞いだ。足先がデスクを滑って、伸ばされていく。貴女は昇り詰めるときには、必ず右足を伸ばそうとする。
足先まで力が入る。淡いペデイキュアが折り曲がる。私は顔を上げて、手を離した。
「ほら、もう時間だ。スカート穿きなさい」
「あああん。そんな・・」
私に急かされて、ようやく起き上がる。手を取ってデスクから下ろすと、スカートを手渡した。壁の時計と見て、貴女が急に慌てて服装を整える。
「ああ、我慢できない」
そう言って、私にキスをしてから後ずさりしながら、ドアへと向かった。
「ドア、開けておきなさい。それから・・」
「はい」
不満げだった貴女の眼差しが輝いた。
「続きを、一人でしないように」
「もう」
頬を膨らませてドアを開け、最後に振り向いて、紅い舌をだして顔をしかめてから貴女が出て行った。