空中楼閣*R25

*リンク先が不適切な場合があります。ご容赦を*

動物みたいに

 たしか「春のクマみたいに・・」と書いたのは、つい最近も海外で賞を貰った有名作家だったと思う。「動物のまねが好き」と歌うのは、活動休止宣言をしたばかりのグループの一員であり、リーダーの奥様だ。

 春のクマはゴロゴロとはしゃぎ回るのであって、交尾を意図して書かれた訳ではないが、歌のほうは、しっかりと性交を表現して書かれている。

 人間は時々、自分が動物であることを忘れてしまうことがある。

 時計を腕にはめ、靴を履き、電気のスイッチを入れ、ついつい動物とは別の生き物みたいな気分になる。

 でも私は、貴女と目を合わせれば、いつでも動物の姿を晒す時間を始められる。

 腕時計を外し、靴を脱ぎ、裸になって電気のスイッチを切る。窓のカーテンをあけて、外の光を部屋に満たして、キスから始める。

 唾液を交わすことで、男は女の遺伝子を嗅ぎ取るそうだ。その遺伝子に合わせて、自分のフェロモンを唾液として注ぎ込むらしい。

 交わるべき相手か、そうでないか。誘うべき相手か、そうではないのか。意識とは全く別の動物的な本能が内分泌を支配して、遺伝子の交配相手を探り出す。

 キスをしながら、貴女の腰をテーブルにあげる。膝を大きく拡げさせて、その中心に顔を埋める。貴女の動物の匂いを吸い込んで、淫らを口に頬張った。

 人という動物の交尾は、他の動物とは少し違う。交尾だけは欲望を剥き出しにするという意味では、他の動物よりも動物らしいのかもしれない。

 喘ぐ貴女の腰を引き寄せて、舌を思い切り伸ばす。私の舌を貴女の粘膜が誘い込んだ。

 晴れの日には仕事をなし、雨の日には教養を高める。それも人間だが、交わる時には、動物に戻るのも人間だと思う。少なくとも私は、そう思う。