空中楼閣*R25

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嫉妬について


「その当時のあなたを知らない自分が悔しいわ」

 そんな昔に貴女と出会っていたとして、その時から恋に落ちていたとしたなら、初めて貴女とキスをした、あの霧雨の夜が巡り来るまでに、私は何度も貴女を裏切り、悲しませ、泣かせたことになる。

 そもそも、キス以前の昔に出会ったとしても、貴女は私に恋をしたとも思えないのに。そんな昔の事に嫉妬して、悔しがるんだ。

 そんな風に考えるのは、いかにも私が男で、貴女が女だからだろう。

「嫉妬という漢字は、両方とも女がつくのよ。女は嫉妬で出来てるの」

 貴女に言わせれば、「過去にも未来にも、嫉妬する」のだとか。「異性だけでなく、仕事であったり男友達であったり」と、とにかく「私の知らないあなたの存在」に嫉妬するするらしい。

 どうやら、女は時空を超える生き物のようだ。さしずめ男性は三次元生命体で、女性は四次元生命体らしい。

 自在に時空と飛び越えて嫉妬するあげくに、自分から「不安になったりして」、小さな種から妄想を膨らませる。「嫉妬してもどうしようもないって、よくわかってるんだけど」だそうだ。

「なんの理由もなく『あっ』って気がついちゃうこと、そこからは妄想の嵐で、自分でも止められなくなるから」

 それが馬鹿げてるし、自分を不幸にするかもしれないと判っていても、らしい。

「しかも、『マサカね』と思いながら、それが真実だったりすることって、あるのよね。妄想を確かめるのはやめようと思っているのに、妄想を裏付ける事実はぽろぽろと見え始めちゃったり」

 そうなんだ、社会という世界では男性のほうが上手いはずの嘘が、女性の前では使えない。

 心を惹かれる女性の前ほど、男性は子供のように嘘がばれる。理性が停止して、欲情が支配するから。

「当たっても、ちっともうれしくない。そんなこと気が付かないほうが幸せて知ってても、そうなちゃうの。でも、心と頭が別々になるのよ」

 それは多分、右の脳と左の脳を同時に使えるからだと思う。だから、感情と理性が対比されずに、同時に雪崩れ込んでバラバラに感じるんだ。

 男性は、別々にしか使えないから、言う事とやる事がバラバラになる。だけど、それ自体に気づかないだ。だからそれで悩まない。

 気づけるときは左脳モードで、心のままの行為は右脳モードだからだろう。

 とても淫らな事を要求した後で、世のモラルを嘆いたりする。下半身を丸出しにしたままで。

 嫉妬はみっともないと言いながら、お前は俺のものだと言う。浮気ぐらいと言いながら、プライドを傷つけられたと怒る。

 好きな人の前ほど、男性は右脳モードになってしまう。有頂天の猿のように。